148話 王と星の子
新人墓守のドムは、消えた少女が落としていった鍵を取り戻そうと勇気を振り絞った。鍵を拾ったタル王の手に渡ってはいけない、と直感で思ったからである。
※ ※ ※
ドムは、恐怖で震える足で何とか立っていた。
差し伸ばした手の指先が冷たくなって行くのを感じる。
タル王はそんなドムを真っ直ぐ見つめ、何か考える様な仕草を見せた。
「君が返しに行くと言っていたが、唄人の役目はどうする。もう歌わないのか?」
う…
ドムはタル王の言葉に本来の自分の役目を思い出した。ドムは代々つづく墓守。この王達の墓の為歌い続ける役目があった。
「僕は……」
ドムは、差し出した手を下ろすと同時に視線も足元へと移動した。
いつの間にか地面に移動していた星の子・ミィとチィが心配そうにドムを見上げている。
ドムは腰を下ろすと、ミィとチィを優しく両手ですくった。
ドムを慕って心を許している星の子達を、タル王は不思議そうに見つめていた。
「その子達は星の子か?」
「はい」
ミィとチィはドムとタル王を交互に見つめ、様子を伺っている。
体がピンク色のミィは、今にも泣き出しそうなドムの顔を見上げ力強くうなずきmmmと小さな声で鳴いた。
「ミィ?」
ミィはドムの手からピョンと飛び降りると、
サササと短い足で駆け出しタル王の前へと向かった。
「ミィ!」
ドムはとっさにミィを追いかけたが急に視界が歪んだ。
あれ?とふらつく足元を踏ん張り頭を振るが、歪んだ視界はさらに湾曲し世界が回り出した。
ミィはタル王の足元にたどり着くと小さな声で鳴き出した。
「mmm」
「ほう。それで?」
「mm。mmmm」
ドムは回転する視界の隅っこでミィとタル王が会話をしているのだと分かった。
「ミィ……」
ドムの声は音にならなかった。地面に倒れた体から伝わる鈍い衝撃身と共に、視界に薄い膜がかかりプツリと途切れてしまった。
つづく
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