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143話 ドムの混乱
ドムは目の前にいる老人が第8の王様・TARU(タル)王だと気がついた。どうして眠りについていた王様がここにいるのだろうか。ドムは全身の血の気が引いていき寒気を感じていた。
※ ※ ※
少女は笑顔でタル王に手を伸ばした。
「これ、どこの鍵か知ってる?」
少女の手にはあの鍵が握られていた。
「はて、どこの鍵だろうね」
タル王は手を差し伸べた。
ドムはとっさに鍵を渡しては行けない、と直感で感じたが体が動かなかった。まるで足が石になってしまったかの様で、その下から根が生えてしまったかの様に一歩も動くことができなかった。
「こりゃ、綺麗な鍵だね。君の宝物かな?」
「ううん。おばあちゃんの大切な物だったんだって。それ、私にくれたの」
「ほう。君に」
タル王は鍵をあらゆる方向から見つめクッと口角を上げて笑った。白い髭に隠れた口元でもドムにはタル王が不敵な笑みを作っているのが何故かわかった。
「あ……あ」
ドムは声までも出すことができないことに気がついた。必死にテーブルの上にいる星の子・ミィとチィに助けを求めるが、2匹ともタル王の手にある鍵に釘づけになっていた。
「どれ、どこの鍵が探してみるというのはどうかな?」
「いいね! 何かここには扉がいっぱいあるし。何処の鍵が知りたい知りたい!」
少女は立ち上がりテーブルに両手をつくとピョンピョンと跳ねて喜んだ。
タル王と少女はまるで、ドムがそこにいないかの様に気にすることなく暗闇の方へと歩み出した。
___ダメ!
ドムの声にならない声は、小さな風に巻かれて消えてしまう。
このままだと、王達の墓を開けてしまう事になる。
それは、これまで守ってきたモノを失う事に繋がる…ドムは必死に体を動かそうと両手両足に力を込めた。
ふと、ようやくドムの異変に気がついたミィがテーブルの端からドムの方へと視線を向けた。まるで人形の様に突っ立っているドムの目が赤く血走り、ただ事ではない事態を知らせている。
「mmm!」
ミィは慌ててテーブルから飛び降りるとドム目掛けて短い足でかけてきた。
ドムは、ミィが近づいて来た事に気づくことなくまだ体に力を込めている。
ミィが心配そうにドムを見上げて右往左往している。
ドムの足がジリリと動いた。
「mm」
ミィはドムの足元に近づき、そっとその足に優しく触れた。
すると、みるみるうちにドムの体は光を纏い呪縛が解け大きな一歩を踏み出すことができ…勢い余って前方に転んでしまった。
ドムの手足に痛みが走る。しかし、ドムはそんな事など気にせず慌てて立ち上がり墓へ向かう者たちの後を駆け出した。
つづく
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