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261話 鍵屋の娘

夢の中に取り残されている黒の女王・シャム。彼女を助ける為に墓守のドムは走り回っていた。一方ドムの兄・ドミノも黒の国へ訪れたのには意味があった。集めた夢のカケラの1つに鍵穴があるものがあったのだ。その秘密を探るべく黒の国に住む「鍵屋」を訪ねてやっきた。


※ ※ ※

ドミノ達は真っ直ぐに伸びる廊下を進み、一つの部屋へと案内された。

「やけに静かだね」

ドミノと肩を並べて歩いていた護衛・明(あかり)が小声で呟いた。
ドミノの相棒である風の子・シロイトは大人しくドミノの腕に巻きついる。

屋敷の変化にドミノ達の前を歩いていたシイナも気が付いているようだった。
シイナの相棒となる風の子・マロンは落ち着きなく廊下を行ったり来たりと飛び回っり、それはまるで誰かを探しているようだった。

「お、お嬢様。ほ、他の方々は?」

そう話しかけたのは列の先頭を歩いているこの鍵屋の娘・セシル・ショーン・SI。
このSIは黒の国王と同じ文字を使い、同じ一族だという証明だった。

「今日新しく鍵ができたのよ。それを城まで届けに行ってるわ」

「み、みんなでですか?」

「そうよ。城から急に8つの鍵を納品してくれって。もう無茶苦茶よ」

セシルは怒った様子で足音をより廊下に響かせた。

「みんなが帰るまでここで待ってて。私もすぐに出かけなくちゃ」

「え? い、今からですか?」

「そうよ。私がいなくちゃ話にならないでしょ」

そう言ってセシルは扉を開くと、その部屋へとドミノ達を招き入れた。

「すぐに戻るわ。8つの鍵の設置が終われば」

「設置ですか? どこに?」

思わずドミノは声を挟んだ。さっきからセシルとシイナの会話がどうしても気になっていたのだ。8つの鍵が何に使われるのか、ドミノは漠然な不安を覚えた。

「教えない。」

セシルは意地悪くドミノの問いかけを蹴ると、足早にと部屋を出て行こうとした。

「いい? この部屋からは出ないでよ? あと勝手に物に触らないこと!」

「お、お嬢様!」

シイナは思わずセシルの腕を掴み引き留めた。その力が思ったよりも強かったのか、セシルの体が大きく傾き床へと倒れた。

簡単に人の体が倒れる恐怖にセシル、シイナ、そしてドミノも思わず目を瞑りその衝撃から目を逸らした。

「っと。危ない」

とっさの事で何が起こったのか理解するのにしばらく時間がかかった。
我に返ったセシルは、自分が明の腕の中にいる事に気がつき顔を真っ赤にして叫んだ。

「あんたっ! 失礼よっ!」

「お、お嬢様!」

「うるさいっ!」

セシルは大声で怒鳴ると飛んで部屋を出て行ってしまった。

セシルの体を支え助けた明は、彼女に違和感を感じて首を傾げた。

助けた相手に罵声を浴びせる事がどれだけ失礼な事か…それは長年セシルの付き人をしていたシイナにさえ理解できた。

「ご、ごめんなさい……」

セシルの代わりにシイナの謝罪の声が、静かな屋敷の床へと落ち消えていった。

つづく

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