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134話 墓の中の住人

墓守のドムは導かれた声によって王達の墓へとつづく洞窟の中へと足を踏み入れた。そこは、かつて通った事のある場所。ドムは光る星の子達を頼りにズンズンと洞窟の奥へと足を進めた。

※ ※ ※

ドムはいつの間にか光の中に立っていた。
しかしそこは、夢の中で見た場所より随分と静かで薄暗いと感じてしまった。
大きな墓守の木。
その枝々の間からこぼれ落ちる陽だまりはなく、鬱蒼とした葉がまるでこの場所を隠しているように茂っていた。

ドムは恐る恐る巨木を回り込み、かつて墓の友人達とお茶会をした小さな家を見つけようと身を乗り出した。

「ここ……」

ドムは驚いた。

洞窟に入る前はまだ日も上りきらない昼前だったはずだ。
しかし、大きな巨木の枝々が邪魔をしているのか日差しは地面まで届かず薄暗くじめッとした空気がドムを包み込んだ。

ドムの肩にしがみ付いていたミィとチィも、その雰囲気の違いに気がつき、より一層ドムに近寄り顔にしがみ付いた。

「すみませーん……」

ドムは小声でその暗闇に声をかけた。
木霊は返ってこず暗闇に吸い込まれたままだ。

「誰かいませんかーー」

ドムは先ほどより大きな声でその先にいるであろう人物に声をかけた。
草影から愉快な友人達が顔を出さないかと耳を澄まして様子を見たが変化はなかった。

ランプ、持ってこればよかったね…と、ドムは洞窟の中では光っていた星の子達を見つめて言った。
星の子・ミィとチィはすっかりその輝きを失い元の姿になっている。
ふとドムの視線の脇を光が横切った。

「灯蟲だ……」

灯蟲(あかりむし)は淡い光を放ちながらドムが通ってきた洞窟へと吸い込まれるように消えていった。ドムは消えた灯蟲を見つめ、はっ!とした表情になった。

「という事は、アレもあるはず!」

ドムは足元に視線を落とし植物達を手探で触り始めた。
ミィとチィはドムの行動が理解できず不安そうにしがみ付いたままである。

「あー、もう。これならどうだっ!」

ドムは低い姿勢のまま両手を広げると、それを胸の真ん中で打ちつけ大きな音を鳴らした。

その瞬間、ドムの足元が小さな光に包まれた。

水風花に集まっていた灯蟲が一気に空へと飛び出したのだ。
音の衝撃で根から水分を吸い上げた水風花が、再び羽を休める灯蟲に照らされて小さなランプのように反射する。

「これで歩ける」

そう言ってドムは墓の中へと足を進めた。

「もう少し進めば、あのおばあちゃんがいるかも。怖くないよ」

ドムはミィとチィを相手に怖さを紛らわしながら進んでいく。

「お兄ちゃん、誰?」

急に声をかけられドムは飛び上がって転げながら驚いた。
いてて、と顔を上げるその先にいたのは老婆ではなく、まだ幼い姿の女の子だった。

つづく

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