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260話 シイナの帰宅

夢の中に取り残されている黒の女王・シャム。彼女を助ける為に墓守のドムは走り回っていた。一方、ドムの兄・ドミノも黒の国へ訪れたのには意味があった。集めた夢のカケラの1つに鍵穴があるものがあったのだ。その秘密を探るべく黒の国に住む「鍵屋」を訪ねてやっきたのだ。


※ ※ ※

上昇するガラス箱に乗ってドミノ達は目的地である部屋へと辿り着いた。
シイナは手慣れた様子で開いたガラスの扉を降りると、ドミノ達にも降りる様にと促した。空っぽになったガラスの箱は、音もなく扉を閉めると再び上昇しどこかへと消えてしまった。

「行ってしまいしたが…」

「だ、大丈夫です。呼べばまた来てくれるので」

シイナはそういって背筋を伸ばしすと、小さく息を吐いて気合いを入れた。

「い、いきますよ」

そういって目の前に現れた大きな黒い扉に向かって手を伸ばした。
ドアノックを手にし扉を叩く。

ドン、ドン、ドン……

思ったよりも重たい音が周りに響き渡り、ドミノと明も緊張の顔色を見せた。

「はーい」

扉奥から女性の声が聞こえ、続いて響き渡ったのは施錠した鍵を開く音だった。

ガチャリ……ギギギ

重たい扉がゆっくりと開き、そこに顔を覗かせたのは懐かしい顔だった。

「シイナ!」

「お、お嬢様! た、ただ今戻りました」

出迎えたのは、フワリとした長い黒髪の屋敷の娘・セシルだった。

「あんた! どうしてここに? もしかしてイジメられて帰ってきたの?」

「ち、違います!」

シイナは慌ててその場から一歩下り、後方に立っていたドミノと護衛・明の存在を知らせた。

「あら」

セシルの表情が一気に険しくなったかと思うと、ドミノめがけて一気に駆け出した。

「あんたっ! あれだけこの子を傷つけないでって言ったのに!」

「え?」

ドミノはワガママで自分勝手なお嬢様の言葉の意味が分からず怯んでしまった。
ドミノの身に危険が及んだと判断し、護衛の明がセシルどドミノの間に体をねじ込み睨みを効かせ威嚇した。

「それ上近づいたら、攻撃とみなしてこちらも容赦しませんよ」

「何よっ! どきなさいよっ!」

明の睨みも威勢のいいお嬢様には通じなかった。

「お、お嬢様! わ、私元気です! 大丈夫です!」

「嘘おっしゃい! そんなに痩せて! ろくに食べさせてもらってないんでしょ!」

その言葉にドミノはどうして彼女が怒っているのか理解した。

そうだった。
ワガママで自分勝手な鍵屋の娘・セシルは、とても友達思いの優しい娘だった。

つづく

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