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255話 黒の女王が守るもの

1人夢に取り残されている黒の女王・シャム。彼女を助ける為に墓守のドムは走り回っている。一方黒の城でコリーとサンディは、様子を見にきた黒の王・シーカの話から「夢の入り口」を見つける事ができた。


※ ※ ※

黒の王・シーカの幼い頃抱いた「画家」の夢は叶える事ができなかった。それはシーカと一緒になり黒の女王となったシャムも悲しんだ。

しかし、2人はその思いを口にはしなかった。
互いの事情より、国の繁栄・安定の為に時間を使うことを余儀なくされた。

それは幼い頃から決まっていた運命だったのかもしれない。

「驚いたよ、君が頭からスパゲッティをぶら下げて飛び込んできた日は」

「私だって。あなたがあんな所で泥んこになって絵を描いていたなんて」

そんな会話を笑った時間など遠い昔に置いてきてしまった。
それはシーカが第7の王の役目「探人」(さがしびと)を後継すると決定した時から、さらに2人の距離は開いていった。


「女王様はその井戸でお待ちになっていますよ、今も」

コリーは黒の王と女王の思い出の場所が夢の入り口だと伝えた。

「そんなはずはない。彼女はもう私達の事など気にも留めてはおらんはずだ」

「そんな事ないよ!」

黒の王の話を遮ったのは、女王の体で目覚めた夢歩きのドナだった。
女王は今夢の中で1人っきり。
代わりに目覚めてしまったドナのせいで、女王は夢に置き去りになってしまったのだ。

「シャムは、みんなを守るって言ってた」

「守る? 何からだ」

黒の王は女王に向かって問いかけた。
目の前にいる彼女は別人だという事を、黒の王は気がついていた。

「仮面の奴らだよ! 人の夢を切り刻む、悪夢を作り出す奴らから!」

その言葉に黒の王の眉がピクリと動いた。

「そんなバカな。面(つら)は私の所に来るはずだ」

かつての先代の王、つまり黒の王・シーカの父親からそう聞いていたのだ。
父親は祖父から、祖父はその先祖から、と役目を受け継いだ者の所へそいつらは現れていた。そして、悪夢を見せられ心を奪われる。
その姿を嫌と言うほど見てきたのだ。

「それをシャムが止めたんだよ。代わりに私が引き受けようって。彼の夢を邪魔しないであげてって」

「私の…夢?」

「今話したじゃない! 画家になるって。奴らは夢の色から食べちゃうんだ」

その言葉に黒の王は、まだ女王に自分の事を思う気持ちが残っている事に驚いた。

同時に遠い昔諦めた夢を、今でも守ってもらっている…。
黒の王は胸の奥底でせき止めていた思いが込み上げてくるのを両手の震えを見つめながら感じていた。

つづく

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