31話 露店(ストア)と8の巣
墓守の役目を弟のドムに継承後、意識を失ったドミノはようやく動ける様になった。
肺いっぱいに吸い込んだ空気がいつもより薄い……ドミノはそう感じた。
アネモネの空飛ぶ絨毯の上で、ドムがこれまでの事を教えてくれた。
神の部屋で意識を失ったドミノを外まで移動してくれたのは壊人の火影だと言う。
皆心配する中、サソリの姿をした守護柱のスーだけは反応が違った。
「墓守は弱いなぁ」
そう言って、さっさとその場を去ったと言う。
気が付けば黒の王・シーカの姿もなかったそうだ。
「兄さんは弱くなんかないよ。ちょっと風に当っただけだ」
ドムはスーの言葉を許せないと言った。
ラルーはドムの手のひらの上で大声で笑った。
「あやつは誰にでも文句を言う。そういう奴じゃ」
その言葉にドムは大人しくなった。
「あ、そうだ兄さん。ラヴィ王がこれを兄さんにって」
そう言ってドムは手紙を取り出した。
宛名を見ると、父ドウカへ宛てたものだった。
「ありがとうございます」
ドミノは手紙を受け取り見つめた。
もう自分が戻る場所は小屋ではない……村の方なんだと思い知らされる。
嬉しいはずなのに、その思いは宙ぶらりんになったままで安定しない。
「それより、アネモネ。どこに向かってるの? 」
ドミノ達の乗る絨毯は、ある町の上を飛んでいた。
露店には出来立ての食べ物が並び、その先には天までそびえるビルがドミノ達を迎えていた。
露店商人達は、様々な國から買い物に来る客人達と共に笑顔で楽しい時を過ごしていた。
「世界中の人が集まってきたみたい……」
ドムはこんなに沢山の人を見たことが無かった。
「そうだ、2人にいいもの見せてあげる!」
そう言って、アネモネは町に近づいていた絨毯をひるがえし建物の上へと向った。
ドミノ達はあっという間に町を見下ろす形となった。
「見て、ここが第2の王のカル・火影達ファミリーが暮らす町『5國の火路(フト)』だよ」
アネモネの指差す國はとても活気があった。
「この建物に皆んな住んでるの?」
ドムは絨毯の下を覗き込んだで驚いた。
そこには建物の内側がくり抜かれた8角形のビルがあった。
ラルーが揺れる絨毯の上に飛び降りた。
「ここは、言わば役所に近いものじゃの。ファミリーが夢を壊す際の手続きや、物資、管理など様々な事柄を管理する場所じゃ。全部で8つの部署に分かれてるから8の巣とも言うておる」
「ま、実際ファミリーはよく働く働き蜂だからね」
アネモネが笑いながらそう言った。
「ここは、全てが集まる場所と言ってもいい。人も物も夢も」
ドミノとドムは、お祭りの様な賑やかな露店(ストア)を目を輝かせていつまでも見つめていた。
つづく
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