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144話 何処から?
ドムは、王達の墓へと近づく第8の王・タル王と鍵を持つ少女を止めるべく必死だった。動かない体に自由が戻ると、一目散に駆け出した。
※ ※ ※
ドムは少女とタル王の前に飛び出した。
「ま、待って!」
切れた息を整え、ドムは顔を上げタル王の顔を見上げた。
「……」
タル王の表情は先程までの穏やかさは無く、冷酷な目をドムに向けていた。
「ねぇ、行こうよ」
少女はタル王の手を引っ張り先へ進もうとする。ドムは両腕を開き少女の行く先を阻むと、なるべく怖がらせない様に腰をかがめて笑顔を見せた。
「ねぇ、その鍵って大切な物って言ってなかった? そんなに簡単に使っていいの?」
「え〜。だって気になるんだもん」
「もしかしたらここに合うのが無いかもしれないよ? 何処の鍵かおばあちゃんに聞いてからの方が……」
うーん、と少女は握りしめる鍵をじっと見つめ、皺々の両手でこれを握らせてくれた人の言葉を思い出していた。
___「この鍵はそう多くは使えない。もう客は来ない。……だから、お前が最後におなり。ずっと待ってなくていい。訪ねてきた友人と一緒にあそこから外へ向かうといい」
少女はこの言葉の意味が分からなかった。部屋で眠る弟・ブーに報告する為、長い廊下を駆け足で戻っている所だった。
気がついたら、ここにいた。……「訪ねてきた友人とあそこから外へ」とはどういう事だろうか。
「ねぇ、お兄ちゃんは何処からきたの? おじいちゃんは?」
少女はドムとタル王を交互に見つめ、老婆の言葉にあった「あそこ」を確かめようとしていた。
「ぼ、僕? 僕は向こうの裏の洞窟から」
ドムは薄暗い穴の向こうに見える、墓守の木の裏にある洞窟を指さした。少女とドムはタル王の顔を見てその動きに注目した。
タル王は少女の手を離すとゆっくりと俯き深い息を吐き出した。その呼吸と同時に風が吹き草木を揺らす。顔を上げたタル王は真っ直ぐと指伸ばし、前方を指さした。その顔に嘘は言っていなかった。
ドムはその示された先の、『第8の王』の墓を見つめ、やっぱりと頭を抱えて浅い呼吸を数回繰り返した。
つづく
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