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147話 震え

ドムはタル王が神ではないかという疑問を持っていた。しかし、タル王は「神の1番近くで時を過ごし、人より少し知っておる……というだけ」と告げた。もうこの世界に神は存在しないのか?その疑問を問いかけた少女は、ドムの目の前から消えていなくなってしまった。

※ ※ ※

ドムは少女が消えた事に驚いた。ついさっきまで側にいた少女の体温は空気に残ったままだった。

「戻って行ったか」

タル王は一歩踏み出すと地面にキラリと光る物を見つけ手を伸ばした。

「戻ったって? 何処に?」

「彼女の戻るべき場所だよ」

そう言ってタル王は地面から1本の鍵を拾い上げた。ドムは目の前でその「鍵」が拾われて行く様子を見て、胸内のざわつきが大きくなった。

「それ、返して下さい!」

ドムの言葉ははっきりとしていた。タル王の持つべき物ではない、彼女に返さなければと思ったのだ。

「君が扱えるものじゃないよ」

「返してください!」

手を出すドムは真っ直ぐタル王を見つめた。その手や声が震える事に自分でも驚いたが、今すぐに取り戻したい気も持ちに嘘は無かった。

「何処の鍵か分かるのかね?」

「分かりません。でもあの子は大切そうにしてたから……返しに行きます」

「返しに? 誰が?」

「僕です」

慣れない敬語がドムとタル王の距離を広げて行く。足まで震えていきたドムは、目の前にいるタル王に対する感覚が何か分かった。

それは、「恐怖」だった。

つづく

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