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132話 迷人(まよいびと)4名

向人のブースでドミノとシイナは明の弟・光(ひかる)に出会った。彼はファミリーの中で「夢主の夢核を採取して夢を解体する」ファミリー・key(キー)に属していた。

※ ※ ※

明(あかり)は改めてドミノとシイナにファミリーの光(ひかる)を紹介した。

「弟の光です」

「よろしくお願いします」

光は明と同様前髪が短く、左耳には明と同じ形のピアスを一つしていた。

「お、おそろいですか?」

シイナは、興味深々な表情で明と光の耳を交互に見つめた。

「あぁ、これですか。これは……」

光が話そうとした時、ブースの入り口が開き迷人(まよいびと)を数人連れた役人が入ってきた。
迷人は皆不安そうな表情で役人に言われるままシゲル達のそばへと近づいて来た。

「本日は4名! 報告書はこちらに!」

役人はそう言って言葉を簡潔に述べると向人・シゲルに書類を差し出し迷人4名には、後はこちらの者が、とだけ伝え去っていった。

「4名って事は4つだな」

天火は笑顔で顎をさすりながらシゲルを見た。
シゲルは眉を困らせ書類に目を通すと迷人に対して優しい顔を向けた。

「どうぞこちらへ。愛、この方達の案内を」

「はーい」

愛は不安そうな4人の迷人を休憩できる部屋の隅へと案内しに行った。

「コントラ様よ、頼みました。明も頼んだよ。光はよくやってくれています。貴方から預かった弟君は私が守るのでご安心を」

天火はそう言って他のファミリー達を連れてブースから出ていった。

「じゃぁ、姉さん。また」

「あぁ、体無理するんじゃないよ!」

「姉さんも」

明と光はしばしの再会を惜しむ様に別れた。

「では、私たちも参りましょう」

振り返った明の表情は再び鉄仮面に戻っていた。

「あ、明さんって……」

シイナは明の人間らしい所を見て共感が持てた様だ。

「何ですか?」

「い、いえ、なんでもないです」

シイナは明に背を向け、そそくさとブースの一角に向かうシゲルの後を追いかけた。

「待ってください。気になるじゃないですか。続きは何ですか」

明もシイナの後をついていく。

そんな2人を追いかけてドミノも歩き出したがその顔はとても和やかだった。

いよいよ夢のカケラを採取するため、人の夢に介入する。
緊張の時間がいい方向に向ったな、とドミノの表情はさらに優しくなった。

つづく

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