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夢うつつ絵本

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「BOX SPACE︰夢現」の絵本バージョンです。 イラストと短い文章で物語は進みます。
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#絵

【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢15p

【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢15p



神は王様達に人の夢に入れる「もう1人の自分」と、歪んだ風を断ち切る「大きはハサミ」を1つ与えました。

このハサミは夢へと入る時の「鍵」の役割もある、と神は言いました。

『人の夢では顔を隠して歩きなさい』

『決して人の夢を持ち出してはいけません』

『人の夢を自分の物にしてはいけません』

そう言い残し神は再び消えてしまいました。

こうして、王様達は悪夢から人の夢を守る「役目」を神から与

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【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢14p

【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢14p



神の言葉を乗せた風は、王様達の間を吹き抜けながら言葉を続けました。

『夢に入り、歪んだ風を断ち切りなさい。この世界が恐怖で満ちないように』

『みんなの夢を悪夢から守るのです』

その声は子供のような、大人のような、女性のような、男性のような、とても不思議な声をしていました。

「でもどうやって?」

「私たちは勝手に人の夢には入れませんよ?」

神の言葉は顔を見合わせる王様達の前に大きな鏡

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【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢13p

【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢13p



「楽しい夢ばかりだったらいいのに」

最後の王様がそう言いました。

「君はどんな夢を見たんだい? 楽しい夢じゃなかったの?」

「僕は夢の中を歪んだ風が通るんだ」

「歪んだ風って? それが通ったらどうなるの?」

「一瞬で変わっちゃう。大好きな人が遠くへ行っちゃったり、取り返しのつかない失敗をしちゃたり……」

「そりゃ悪夢だね……」

そうなんだ、と最後の王様がため息をついた瞬間、王様達

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【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢12p

【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢12p



「わたしはまた夢を見なかった」と、暗い顔の王様が話し始めました。

「そこはただの暗闇。まるで海の底に沈んでいるような夢だった。上も下も分かりやしない」

「それはまだ夢を見てないんだよ」

隣に座る王様が笑って言いました。

「でも確かに寝ていたぞ? わたしは暗闇から目が覚めたんだから」

「そりゃ夢の途中を歩いてたんだ」

反対側に座る王様が言いました。

「なんてつまらない」

そう言っ

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【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢11p

【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢11p



「僕の夢はこんな感じ」と、笑顔の王様が話し始めました。

「僕は宇宙の真ん中にいてね。きらりキラリと輝く星たちの楽しそうな話を聞いていたんだ」

「どんな話をしていたの?」

「昨日の調子はどうだった? 明日晴れるといいね、とか。本当に些細なことを。そして小さな声で笑うんだ」

そう言って天井を仰いだ王様達の目の前に、輝く宇宙が広がりました。
その宇宙からシャラシャラと小さな鈴音のような笑い声

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【夢うつつ絵本】たまごの見た夢9p

【夢うつつ絵本】たまごの見た夢9p



「僕の夢は美味しかったよ」と、少し太った王様が話し始めました。

「目の前に広がるのはオレンジ色の海。ドーナツの浮き輪で飛び込んで、底に落ちてるキャラメルを取りに行くんだ。食べても飲んでも無くならない。本当に夢の国のようだったよ」

「それ以上食べたらまたお腹が出てくるぞ」

そんな言葉も気にせずポヨンと頬を抱る王様が舌なめずりをすると、みんなも口の中に夢の様な甘い世界が広がりました。

つづ

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【夢うつつ絵本】たまごの見た夢7p

【夢うつつ絵本】たまごの見た夢7p



「私はこんな夢を見ましたよ」と、違う王様が話しました。

「私は地面に寝転んでていてね。土の匂い、そこから生える草木の青々とした香り。穂を付け開いた花からは甘い蜜の匂いがただよってきてね。まるで虫にでもなった気分だったよ」

「とてもいいね」

「ずっと忘れてた、子供の頃の時間を思い出す懐かしい匂いのする夢だった」

そう言って目を閉じ思いを馳せると、みんなも花畑の中にいるような自然の夢の香り

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【夢うつつ絵本】たまごの見た夢5p

【夢うつつ絵本】たまごの見た夢5p



大きな円卓を囲み、王様達の話題が尽きることはありません。
何でかって?

そこには世界中から集められたありとあらゆる「夢」の話があったからです。

王様達はそんな夢の話を記した本を読みなながら、最近見た自分の夢の話を始めました。

人は毎日夢を見ます。

決して減る事はありませんでした。

つづく

【夢うつつ絵本】たまごの見た夢1p

【夢うつつ絵本】たまごの見た夢1p



昔むかしの話。

神の朝食は宇宙の真ん中でいつも1人です。

星の瞬きはとても静かでとても綺麗。
しかし、それはとっても退屈なものでした。

神は食卓にある卵に手を伸ばしこう呟きました。

「なま卵なら新しい世界を。ゆで卵なら新しい命を作ってみよう」

神の手から離れた卵は宇宙の中をゆっくりまわる……

それはまるで生まれたての淡い月の様にも見えました。

(つづく)