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▼読書感想文▼兎は薄氷に駆ける

『兎は薄氷に駆ける』
貴志祐介

あらすじ

日高英之という22歳の若者が、
自身の叔父の殺害容疑で逮捕される。
その死因は愛車のエンジンの不完全燃焼による
一酸化炭素中毒。
そして動機は資産家であった叔父の
遺産目的とされた。
執拗な取り調べの末に日高は自白。
事件は解決を迎えるかと思われたが、
一連の流れは全て15年前に起こった
英之の実の父の冤罪事件にまつわる
復讐劇の始まりであった。


読書感想文

兎だと思って甘くみてると
思わぬしっぺ返しを食らいます。
兎はその大きな耳で
どんな声も聞き逃さず、
そのつぶらな目で
何事も見逃すことなく、
そして全てを記憶に刻みつけて
逃げる道筋を見つけ出す。
追われているように見えて
実は追っているのではないだろうか。
か弱きもののように見えて、
実は何者にも屈しない強きものなのでは。

本の帯に
「これぞ現代日本の“リアルホラー”」
とありましたが、
確かにゾッとするポイントが
あちらこちらに。
ちなみに心霊系のホラーではありませんので
ホラー系苦手な方も安心してお読みいただけます。

ゾッとポイントその1
警察の取り調べが違法すぎ。
全ての警察で行われているとは思えないが、
少数であってもこんなことが現代の日本で
まかり通っていることにゾッ

ゾッとポイントその2
リストラ請負人という仕事があること。
人の弱みを握って退職を迫る。
そして結局その請負人本人もリストラされることにゾッ

ゾッとポイントその3
裁判は常に検察側に有利であること。
開示されていない証拠や
警察での取り調べの録画の開示請求に関して
弁護側はほぼ無力であることにゾッ

ゾッとポイントその4
被害者家族や加害者家族への
補償やケアがまるでないことにゾッ

ゾッとポイントその5
復讐のためならどんな手段も厭わず
一番効果的な方法を一番効果的な場面で投下する。
虎視眈々とその瞬間を待つ執念深さにゾッ

復讐劇っていうけど初っ端から普通に逮捕起訴されてるし、
ここからどうやって復讐していくんだろうって
思いました。
でもね、ものすごく完膚無きまでの復讐でした。
こんなに綺麗な復讐ってあるかな。と。
綺麗な復讐であるにも関わらず
読後感スッキリは感じませんでした。
若干22歳の青年をここまでにしてしまった
15年も前の冤罪事件。
でも司法はきっとその冤罪事件を認めない。
なら復讐はいつまで続くのだろうか。
復讐に限らず何かに囚われて生きていくのは
とてつもない重荷を背負っている。
自重で歩けなくなる前に
重荷を手放す勇気も必要だと思いました。

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