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【毎日18時頃投稿】冥土喫茶(実話)【全22話予定】

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【あらすじ】 扉を開ければそこはメイド喫茶。 「いらっしゃいませ、ご主人様」 店内に響くピンクのメイド服を着たメイドの声。 そのメイドに私は興味を持ってしまった。 その店に行った…
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冥土喫茶に逝こう㉒終

冥土喫茶に逝こう② 2月上旬の最初の土曜日。  決戦当日。  私とネクタイはK市に車を走らせていた。  K駅の駐車場に車を止めた。  歩いて5分。  店の前に着いた。  時間は今でも覚えている。  忘れられないことを彼女がしてくれたから。  20:05  黒の扉を開けて、再び黒の扉を開けた。  私が一歩足を踏み出した瞬間だった。  雰囲気だった。圧倒的な雰囲気。  今日俺は死ぬかもしれないと私に思わせるほどの強烈な先制パンチを食らった。  後日ネクタイに聞いたら同じように感

冥土喫茶に逝こう㉑

冥土喫茶に逝こう 年が明けて、2週間ほどたった日曜日。  冬の寒さがこたえる。  コタツから出たくないけど、そろそろ作戦の概要をネクタイに言っておかないと。  私はある男に電話した。  もちろんネクタイだ。 「今日暇?作戦の概要話すよ」 「了解!!12時に迎えに行きます」  20秒で電話は終わった。  12時頃迎えが来た。  愛車ハリアーはいつも通り輝いている。 「どうも、ウィルスミスです」 「ウィルスミスさんですか顔黒くありませんね」 「整形したんですよ」 「行きますか?

冥土喫茶に逝こう⑳

魔法が解けた男② 【マインドコントロール】 「思い込ませ、考え込ませ、行動するよう誘導する」  これがマインドコントロールの基本。  洗脳とは違う。  洗脳は暴力的な行為や言葉によって、相手の精神的な部分を崩壊させると同時に、自分の思う通りの行動、思考を持たせること。  似ているようで違う。  対してマインドコントロールは、暴力や暴言で相手を支配しないということ。  本当の自分らしさや自分自身の意志を失い、あくまでも自分でそうなったと錯覚させる技でもある。  心理学者エド

冥土喫茶に逝こう⑲

魔法が解けた男 【マインドコントロール】  その言葉が脳裏をよぎると、私は全身が震え始めた。  なぜ震えるのかわからない。  震えが収まらず、頭を膝の上に下げて座った。  1分後、無意識に出た言葉とある感情が芽生える。 「あの女ふざけたもの。かけやがって!!」  そして、怒りの感情が私は襲う。  どの程度経ってから気持ちが、収まったか忘れてしまった。  気持ちが収まったあと、PCを立ち上げマインドコントロールについて調べた。  調べて、調べてマインドコントロールが得意な

冥土喫茶に逝こう⑰

魔法をかけられた男②  次の週の休みの日、私はメイド喫茶に行かなかった。  ぐっさんに失言したから行かなかったわけではなく、何となく行く気分ではなかった。  Twitterで来週のあめさんの卒業で俺も卒業しようと呟いた。  これも何となくだ。  かまってちゃんだからツイートしたのではない。  日曜日にネクタイにこれまであったことを報告した。  ネクタイは驚いていたが、私が9月末にメイド喫茶に行くことをやめると言ったら安堵していた。  その後、一言つけくわえた。 「もうこれ

冥土喫茶に逝こう⑯

城と従者とお姫様 昨日は衝撃的な出来事を聞いた。  所詮、男と女の世界だった。  キャバクラでもスナックでもある、たわいもないことだった。  だが、違和感がある。  本当にこれが答えだろうか。  考えても考えても、答えは出ない。  考えることをやめて、私はこれからメイド喫茶に行くかいかないかを考えた。  そういえば、あめさんが9月末で卒業だった。  私もその日に卒業しよう。  4ヶ月ほどメイド喫茶で遊んで、勉強にもなった。  何よりも楽しすぎた。  名残惜しいが、「ネクタイ

冥土喫茶に逝こう⑮

デート② 2時間後、待ち合わせ場所のN駅の時計の前にいた。  ここは待ち合わせスポットだ。  多くの人がここで待ち合わせをしていた。  しばらくすると月さんが現れた。 「ごめんなさい。待ちました?」 「待ってないよ。今日はありがとう」 「はい。美味しいデザート早く食べたいです」 「了解。じゃあ行こうか?」 「はい」  N駅近くにも多くの店が立ち並ぶ。  今から行くのはケーキバイキングの店だ。  予約はしていたので簡単に入れた。  スタッフからシステムの説明が有り、券売機

冥土喫茶に逝こう⑭

デート 9月に入った。  まだ暑さは続く。  夏の空は好きだ。  入道雲を見ると心が落ち着く。  今日はデートの日だ。  1日に2人と遊ぶのは失敗だったかもしれないが、情報が早く欲しかった。  最近は気力、体力、精神力も万全だ。  空を見ながらそろそろ答えがでるかもしれないと、心を踊らせていた。  その場所で働いている人しかわからない情報というのが必ずある。  相手は女性だ。  お客の前では猫を被れることも簡単だろう。  だが、一緒に働いている女性の前ではどうだろうか。

冥土喫茶に逝こう⑬

男なら女性を誘わないと② したたかさは必要だ。  生きていく以上、時としてしたたかに生きないといけない。  いい人ばかりではないから。  ある女性にLINEで連絡をとった。  メイドのあめさんだ。  彼女からアプローチを受けていたからだ。  連絡を取る手段を考えていたところ、ある策が浮かんだ。  あの店は、1人のメイドがお客をお見送りしてくれる。  2つの扉があり、メイドが1つ目を開いて2つ目の扉をあけてくれた時が、連絡の紙を渡すチャンス。  私は見事に成功し、彼女と連絡

冥土喫茶に逝こう⑫

男なら女性を誘わないと Lineを交換したが、挨拶程度で終わらせた。  休み明けは忙しくなると、上司に言われていたからだ。  女性と遊ぶより仕事優先。  いざ休みが明けたら、仕事が暇だった。  仕事が終わり、休みに入った。  私はメイド喫茶に行ってしまった。  この3ヶ月間メイド喫茶で遊んでばかりだ。  メイドに片足を突っ込んでいる印象は拭えないが、楽しいからいいだろう。  K市に着き、メイド喫茶に向かう。  扉を開けて座席に着いた。  今日のメイドはまいさんと、てん

冥土喫茶に逝こう⑪

常連会② お盆も終わり、常連会の日になった。  OPENは18時だった。  1時間ほど遅れて行くことをtwitterで呟いた。  19時に店に到着。  1つ目の扉を開けると、大きな声が私の耳に届いた。  盛り上がっているなと思いながら、2つ目の扉を開く。  店を見渡すと9人ほどいただろうか。  L字のカウンターの真ん中に、店で見たこともない男女が座っていた。  50代くらいの女性と男性。  まいさんの親御さんだろうと思い、母親と目があったので軽く会釈した。  その後、父親

冥土喫茶に逝こう【実話】⑩

N市のメイド喫茶② 二日酔いもなく目覚めた。  今日は、再びN市のメイド喫茶巡りをする。  今回は、夜の時間に行くことにした。  昼間とは違った雰囲気を味わいたかったからだ。  いつも通りシンプルな格好で家を出た。  電車の乗り、N駅に到着した。  駅周辺にメイド喫茶が固まっている場所があり、そこまで徒歩で行くことにした。5分くらい歩くと、メイド喫茶が固まっているビル群があった。  最初の店に入る。 「いらっしゃいませ、ご主人様」  周りを見渡すと、7人ほど座れるカウン

冥土喫茶に逝こう【実話】⑨

常連会 K市に向かう電車の中、私は考えていた。  今日行った3つのメイド喫茶と比較して、K市のメイド喫茶は私にとって楽しすぎる。  今まで楽しい店や楽しい出来事はあった。  ただ、『すぎる』までいった店や出来事など、私の人生に存在していない。  おかしいのだ。楽しすぎるということは。  何度目のK市だろ。  いつも通り徒歩で、私は店に行く。  黒の扉を開けば、いつもの通りの掛け声が私を迎えてくれた。 「いらっしゃいませ、ご主人様」  1つ空いている席があった。  私はそ

冥土喫茶に逝こう【実話】⑧

N市のメイド喫茶 休みに入った。  私は胸の鼓動を抑えるように、N市に行く準備をする。  太陽の日差しが眩しく、肌が焼ける。  私服はシンプルな服装だ。  Tシャツにデニム、左腕に時計をして、ボディバッグを背負う。  足元はビルケンシュトック。  肌が弱い体質なのでハットをかぶり、日焼け防止。  ぼうしという名前にして正解だったなと考えながら外に出た。  熱気と夏の日差しが体に突き刺さる。  今日も暑くなりそうだなと考えながら軽やかに駅まで向かう。  N市には20代の