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好きな古畑任三郎をおすすめしてみる

いつもは野球について話してますが、たまにはこういうのもいいんじゃないかということで、自粛期間中にFODで見直した僕の好きな「古畑任三郎」について書いてみたいと思います。

古畑任三郎はかつてフジテレビで放送されていたドラマのシリーズで、1994年ぐらいから3シーズンかけて放送されていた刑事ドラマです。1stシーズンだけ「警部補 古畑任三郎」とタイトルに警部補がついているのですが、これは時代劇と間違われないようにらしいです。たまにシーズン合間にスペシャルとして単発で放送されていて、最後の3rdシーズンが終了してからも続編を望む声は止まず、5年後に復活し、その2年後にファイナルとして3日間復活し、おそらく完結しています。
今回はこのドラマの魅力とおすすめ回を書いてみたいと思います。
ちなみに随所でwikipedia情報と、見る時に解説サイト(特にこちらの『古畑任三郎事件ファイル』)も見たりしてるので、そこら辺と内容的にかぶったりしているところがあるのは先にお断りしておきます。

古畑任三郎の魅力

古畑任三郎の魅力を一言で言うと「コメディー的要素も忘れず、倒叙ミステリーとして犯人の心理を味わえつつ視聴者側から挑戦することができるドラマ」です。

①倒叙形式
通常の推理ものでは、まず犯行の結果のみが描かれ、探偵役の捜査によって犯人とトリックを明らかにしていきます。しかし倒叙形式では、初めに犯人の描写がなされ、視聴者は犯人と犯行過程がわかった上で物語が展開されます。その上で探偵役がどのようにして犯行を見抜くのか、どのようにして犯人を追い詰めるのかが物語の主旨となります。この形式のメリットとして犯人の心理を描く時間が多いので、探偵役に追い詰められる犯人の心理を味わうことができます。
このドラマでは古畑がいつ犯人に気づいたのか、犯行における犯人のミスは何なのか、犯人をどのように追い詰めるのか、にスポットが当てられます。
古くはドストエフスキーの「罪と罰」もこの倒叙形式と言うことができ、TV作品では「刑事コロンボ」シリーズが特に有名で、「古畑任三郎」はまさに日本版「コロンボ」と言えます。

②犯人役が豪華
ドラマで倒叙形式をとる大きなメリットの1つとして、「犯人役に大物俳優を起用することができる」というのがあります。
配役から犯人が予想できてしまうというリスクがないため、犯人に大物俳優を起用することができます。(目立たないように容疑者に複数の大物を起用する必要もない)
ですのでこのドラマの犯人は誰もが知ってる俳優さんのことが多いです。中森明菜や菅原文太、僕の世代ではあまり演じるイメージのない笑福亭鶴瓶や小堺一機、明石家さんま、またキムタクは個人としてもSMAPとしても犯人役で出演しています。イチローなんかも本人役で出演しています。意外と被害者役も豪華だったりするんですけどね(角野卓造、及川光博、板尾創路など)。その他キャスティングにも色々背景があるので、そこも注目ポイントです。

③伏線の張り方が絶妙
この古畑任三郎はシリーズ通して「視聴者への挑戦」の色が強く、証拠となりそうなものやカギとなるアイテムの見せ方が非常に上手いです。冒頭のアヴァンタイトル(後述)や暗転シーンでのヒントを元に視聴者は挑んでいきますが、何気ないシーンに上手く手がかりが紛れ込んでいます。またフェイクも紛れていたりして、視聴者は考えながら楽しんで見ることができます。映像ミステリーとしてとてもよく出来ています。

④コメディー要素が随所にある
脚本が三谷幸喜さんなので、随所に笑えるシーンが出てきます。完全なコメディー回な「なりすまし物」もあって、ミステリー感はないですがそれはそれでとても面白いです。こういう回があるのも古畑任三郎の1つの魅力だと思います。(第22回「間違われた男」や第36回「追いつめられて」など)

古畑任三郎の概要

まず主要人物3人だけ紹介します、と言いつつほぼwiki。

古畑任三郎(田村正和)
警視庁刑事部捜査一課の刑事で、階級は警部補。常に黒のスーツ・ノーネクタイ・サスペンダーで、寒い時期には黒のロングコートといういでたち。警視庁きっての推理力の持ち主で、わずかな手がかりや発言の矛盾を即座に見抜く鋭い観察眼と、犯人の裏をかく巧みな話術により、幾多の事件を早期解決に導いている。
今泉慎太郎(西村雅彦)
古畑の部下。階級は巡査。単純かつおっちょこちょいな性格で、直接捜査に役に立つことはほぼないが、今泉の無意味な言動が古畑に事件解決のヒントをもたらすことも多い。よくおでこを叩かれる。
西園寺守(石井正則)
3rdシーズンからレギュラー登場した刑事。身長が低く、生真面目な性格をしている。事件解決に必要なデータ収集を一手に引き受けるワトソン的存在。

また古畑にはほとんどの回に共通する基本フォーマットがあります。

①アヴァンタイトル
②事件編
③捜査編
④第四の壁(暗転部)
⑤解決編

①アヴァンタイトル
アヴァンタイトルとは、映画やドラマ、アニメや特撮などでオープニングに入る前に流れるプロローグシーンのことです。
本編の前に冒頭で黒い背景をバックに、古畑がその回のキーワードやカギとなる話を教えてくれます。

古畑任三郎

②事件編
倒叙形式の大きな特徴で、犯人が事件を起こすシーンを先に観ることになります。犯人はもちろんのこと、ほとんど犯行の手口を知ることになります。ここで犯した犯人のミスや、意図的に隠されたキーアイテム、動機などをこの後の捜査編で調べていくことになります。

③捜査編
ここになって初めて主役である古畑が登場します。
事件現場に古畑らが登場し、犯行現場の捜査、古畑と犯人とのやりとりから事件解決の糸口を掴んでいきます。

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古畑愛用高級自転車セリーヌ、金ピカのやつ

④第四の壁(暗転部)
舞台上の虚構の物語とそれを観ている観客の間に存在している見えない壁のことを「第四の壁」と言うのですが、登場人物がその壁を乗り越えて観客に話しかけたりしてくることを「第四の壁の打破」なんて言ったりするので、カッコつけて言ってみました。
解決編の前に背景が暗転し、古畑が視聴者に「挑戦」するような形で推理のポイントを語るのが定番になっています。

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「古畑任三郎でした…」

⑤解決編
ここから古畑対犯人の対決がメインになります。古畑が犯人のミスを指摘したり、逆トリック(犯人に対して罠を仕掛けることで犯人でしかあり得ない状況に追い込む手法)を仕掛けて自白へと追い込んでいきます。

この流れが基本フォーマットです。

古畑任三郎のおすすめ回10選

僕が見返した中で特におすすめのものを10回分選んで紹介します。ついでに名言的なもの(もしくはアヴァンタイトル)もつけたりしてます。
大人の事情で映像化されていなかったり、スペシャルとかも入れたかったんですがFODプレミアムになかったりしているので、それらは基本除外してます。

1st season 第2回 「動く死体」 堺正章

古畑任三郎動画第2話

「新しい機械を買った時には必ず説明書を読んでください、少なくとも3回。箱から出す前とセットした後と、寝る前に。一晩置くのがポイントです。気を付けなければならないのは、外国製の機械で…」

この回の犯人は歌舞伎役者で、舞台上で転落死が起きたように偽装しようとするのですが、古畑が些細なことから犯人に気づき追い詰めていきます。その様が非常に鮮やかです。この犯人を追い詰める過程のキーアイテムの1つとして「懐中電灯」があって、この使い方がとてもいいです。特に逆トリックのところ!!共感性羞恥的なものも相まってめちゃくちゃ緊迫感あります。
それと犯行を犯した後に犯人がお茶漬けを食べるシーンがあるのですが、そこも歌舞伎を舞台にしたこの回ならではの1つのオチになっています。

1st season 第8回 「殺人特急」  鹿賀丈史

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「車内で、リクライニングシートを倒す時は必ず一言後ろの人に声をかけてください。そういった小さな思いやりが旅を楽しい物にしてくれます。そう、やっぱり旅は楽しくなくちゃいけません、旅は…」

この回の犯人・中川淳一(鹿賀丈史)は同じく三谷幸喜さん脚本の「振り返れば奴がいる」の登場人物で、後日談もしくはパラレルワールド的な世界観になっているようです。
この回では「新幹線の中」という限られた空間の中で繰り広げられる犯人との対決、最後に古畑によって仕掛けられる逆トリックは見ものです。手がかりも豊富で非常に楽しみながら見ることができます。
この回のオチを観た後に、もう一度同じ世界観の「振り返れば奴がいる」というタイトルを思い出すとハッ!となりますよ。

1st season 第11回 「さよなら、DJ」 桃井かおり

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「痛い?」

この回の大きな見どころは桃井かおりさんの演技がすごいってところだと思います。犯行を犯した後の「痛い?」のセリフは見ものです。
アリバイ崩しをメインに据えたこの回ですが、ラジオ局という舞台を生かした解決編はとても面白いものになっています。
犯人と気づくきっかけはちょっと時代を感じるものがありますけどね…笑

2nd season 第14回 「しゃべりすぎた男」 明石家さんま

さんまと法廷で

「つまり私が言いたいのは、物は見ようによっていろんな形に見えるということで…」

犯人の弁護士役として明石家さんまさんが出ているのが1つの見所になっています。
今泉が犯人に仕立て上げられるプロット、法廷を舞台にした犯人とのセリフ対決など見どころは多いです。アヴァンタイトルにある通り「物の見方」というのが1つのカギになっていて、犯人とともに視聴者も騙されること間違いなしの展開になっています。

2nd season 第15回 「笑わない女」 沢口靖子

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「事件解決のスピード記録、惜しかったですね…」

この回は古畑では度々ある「犯人側のルール」というのがカギになってきます。犯人側に何らかのルールをがあり、それを元に犯行が行われるので、通常では考えられないような不自然な犯行現場になります。「犯人はなぜ証拠を残していったのか」「犯人はなぜ扉を開けたまま犯行に及んだのか」などの謎から、古畑は犯人側に課されたルールを”理解”していきます。特にアリバイについては、なるほど!と思わされます。
上に書いた最後の犯人からの言葉には、あくまで犯人のルールの中で事件を解決しようという古畑の信念が伺えます。

2nd season 第19回 「VSクイズ王」 唐沢寿明

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「今日はビデオに録画していた人はとってもラッキーです。あとでゆっくり巻き戻して楽しんでみてください。」

この回は映像ミステリーとして、特に視聴者が騙される回になっていると思います。密室トリックが用いられているのですが、映像ならではの密室トリックになっており、オチがわかったら見返したくなること間違いなしです。古畑が犯人側に仕掛ける逆トリックもテレビ局という舞台を存分に生かしたものになっています。
クイズがテーマということもあってか、被害者役では伊集院光さんが出ているところも注目です。

2nd season 第20回 「動機の鑑定」 澤村藤十郎

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「要は何が大事で、何が大事でないかということです。」
「物の価値というのは、そういうもんなんですよ。古畑さん」

1度目の殺人の共犯者を2度目の殺人で殺し、1度目の罪をなすりつけるという複雑なプロットに、今回のカギとなっている壺にまつわる多くの手がかり、澤村藤十郎さん演じる物腰は柔らかいのに冷徹さを備えた犯人など多くの見どころがあります。
犯人が犯したミスは何かという大きな謎に加えて、犯人はなぜ偽物と本物の壺のうち本物の方を凶器に使用したのかという謎があるのですが、このもう1つの謎がクライマックスで解明される時の犯人のセリフには大きな衝撃を受けることだと思います。
この回は個人的には最もオススメしたい回です。一見関係なさそうな冒頭のアヴァンタイトルの話も最後まで覚えておきたい所です。

2nd season 第23回 「ニューヨークでの出来事」 鈴木保奈美

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「一期一会という言葉があります。いい言葉です。旅の楽しさは人との出会いです。しかし、出会った事を後悔する人間もたまにはいます。バスや列車や飛行機の中で、たまたま隣に座った人物が例えば、黒い服を着ていて、襟足の長い人物だったりしたら、その旅は最悪です。特に、あなたが犯罪者の場合は…」

このアヴァンタイトル、ちょっとかっこよくないですか?笑
この回は割と画期的な回で、基本的に話はバスの中で古畑と犯人二人の会話のみによって進行していくのですが、過去の犯行について回想シーンが一切なしで進んでいきます。この回想シーンがないことによって倒叙形式としてのトリック当てが成立しています(犯行が事前に描かれているのにトリックを当てることができる)。
会話の中に絶妙に組み込まれた古畑による逆トリックにも注目です。

3rd season 第32回 「再会」 津川雅彦

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「たとえ明日死ぬとしても、やり直しちゃいけないって誰が決めたんですか。」

この回の最も他と異なる点は、事件編がないというところです。古畑が旧友の犯行を阻止するために動くというのがメインで、その旧友が「誰を、どのように殺そうとしているのか」が大きな謎になります。
またもう1つの見どころがあり、それは古畑と旧友との人間ドラマです。他の作品にはない感動させるものがあります。ある程度オーソドックスな話を見た上で見ることをオススメします。

FINAL 第40回 「今、甦る死」

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「これほど完璧な殺人の計画を…
私は知らない。しかし…それでも犯人は、つ・か・ま・る…」

スペシャル回などの簡単に見返せないものは除いていたのですが、これだけはどうしても入れたかったので入れました。
この回は2年ぶりの復活としてFINAL3部作の1作目として放送されましたが、その中でもミステリーとしての集大成という感があります。
ここまで長年やってきた倒叙ミステリーとしての古畑任三郎のフォーマットを逆手に取ったような作品になっており、倒叙形式を保ちつつも本格ミステリーを成立させています。
もう1つの注目ポイントは石坂浩二さんのゲスト出演で、石坂浩二といえば金田一耕助で「名刑事と名探偵の夢の共演」ともなっています。

最後に

そのほかのエピソードにも面白いところ、コメディー的な要素の多い回、細かい見どころなど多いのですが、まあこれぐらいにしておきます。
シーズン的には2ndシーズンを一番オススメしたい思います。
それぞれの回では、「アヴァンタイトルのキーワード」「舞台設定」「キャスティング」「古畑はいつ犯人に気づいたのか?」「犯人のミスは?」「逆トリックはいつ仕掛けられたのか?」などに注目してみてください。

ちょっと時期的には遅い気もするのですが、家で過ごす時間はまだ多いような気もするので見てください。せっかく無料で見られる期間もあるので。FODプレミアムに支払い方法Amazon payで登録すればいいみたいですね。
フジの回し者では無いのでリンクまでは貼りませんが、ぜひFODプレミアムから見てください。

あと自粛期間中に朝日新聞デジタルの「三谷幸喜のありふれた生活」では小説の形で「一瞬の過ち」が連載されていました。一番最近の古畑作品ということにはなるので、ぜひ読んでみてください。

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