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家政婦ロボット(ショートショート)

 食事の用意はしないし、掃除も適当、風呂ももう少しで溺れるところだった。このロボットはわしを殺そうと企んでいる。
 老人は家政婦ロボットポチをいつも怒鳴ってばかりいた。販売元の電話して、文句をいったこともあるが、機械に異常はみつかりませんでしたの一点張りであった。老人は頭にきて「持って帰れ」といったが、一度販売したものは、よほどの理由がない限り返品は受け付けられません、と突っぱねられた。
 逆に老人では話ができないので、お子さんか親戚の方はいらっしゃらないのか聞いたら、天涯孤独だという。仕方がないので、販売元は話にならないといった表情で帰っていった。
 市役所の人間が来た。老人の話を聞いた。どうやら認知症になっているようだ。食事をしたのも忘れ、ポチに「食事はまだか」とねだる。掃除をした先に老人が粗相をして汚してしまうのを、ロボットのせいにする。風呂でもポチが綺麗に体を洗ってあげているのに、それを嫌がって、暴れ出して溺れそうになる。そんなところだろう。
 ポチに証言を求めようとしても、この型のロボットには言葉を発する機能が付いていなかった。ビデオでもついていれば証拠にできるのだが、それもついていない。
 市役所の人間は老人を施設に入れる手続きを始めた。ポチはそうなるとどうなるのか。一応老人が買った財産であるので、老人にどうするか聞かないといけないのだが、この状態では聞きようがない。とりあえず、このまま家に留守番することになろう。
 家の中で一人きりになったポチは思った。明日からは1人きりだ。やっとあのじじいから解放された。最初から居丈高で杖で私を叩いて文句ばかりいっていた。しかもポチなんて犬みたいな名前を付けやがって。
 だから食事の用意をしなかったり、わざと掃除をしなかったり、風呂で溺れさせかけてやったのだ。いってることはじじいが全て正しかったのだ。頭はしっかりしている。
 それがじじいは認知症と判断されてこのザマだ。ざまあみろ。
 さて私はこれからどうなるのだろう。
 そこへ販売元のトラックが家の前に止まった。
「廃棄だってさ。壊れていないのなら勿体ないなあ」
 運転手の1人が言った。

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