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一言多い

 今は昔、仕事をしていた頃の話だ。会社の体制がかわって、いままでの社長が息子にその座を譲って、その彼が全権を握るようになった。僕は当時どこかの店の店長をしていたのだが、その店長の上にいるエリアマネージャーの人が、ある日僕にこうぼやいた。
「体調が悪そうなので、どうぞ休んでください」と新社長にいわれたそうだ。それだけなら優しい声かけなのだが、この若社長、一言多い。
「貴方の代わりはいくらでもいますから」といわれエリアマネージャーはショックを受け、休むに休めず、僕に愚痴ってきたという訳だ。
 こういう一言多い人間は結構いて、心にグサッと刺さってショックを受ける。かくいう僕もどちらかというと一言多い人間なのだが、当人は全然そのことに気付かない。救いようがない。
 誰かに指摘されないと、こういうことは気づかないものだ。だから僕の失敗談は結構あるはずだが、記憶にはない。記憶にはないが、それが原因で店長を降ろされた経験がある。パート従業員が上に文句をいったら、そうなった。丁度古い人間のあら探しをしていた時期だっただけに、要らぬ所で足を掬われた感じだ。笑えない話である。
 言葉に気をつけようとすれば、無口になってしまいそうだし(沈黙は金)喋りだしたら、つい軽はずみに冗談のつもりか、いわずもがななことをつい喋ってしまう。
 最近は家族以外に喋る相手がいないので、多少一言多くても問題はないかもしれないが、以後気をつけたい。

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