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息子が幼稚園児の頃

 入園式の時、初めての経験だったので、すぐに自分の席から俺の所に逃げて来ては甘えていた。その度に席に戻さなければならない始末であった。出欠をとるさい。みな「はい」「はい」と答えていたのに、うちの息子だけ「お腹痛い」といった。親は頭が痛い。

 妻が喘息で入院した。息子は幼稚園に通っている頃だった。息子が幼稚園から帰ってきた時に「お母さん入院したよ」というと、息子は開口一番「誰がご飯作るん?」といった。母親の心配をする前に自分の飯の心配をするところは、ある意味頼もしい。「お父さんが作るよ」と答えると安心したように、いつもと変わらぬように遊びを始めた。

 親父とお袋を誘って、家族でハウステンボスにいった時、卓袱料理のコース料理を注文した。息子は幼稚園児なので、お子様メニューだった。
「長崎県産豚の角煮でございます」というように、料理の説明を給仕人が伝えて、皿を置いていくのだが、息子には何もいわない。それに不満を感じたのか、息子が自分の料理を指しながら「これは」と聞いた。店の人は一瞬とまどったが、すぐに「おにぎりでございます」と答えた。

 妻が息子にいつもより激しく叱った。息子は泣きながら、妻に向かって「お母さんは子供が嫌いなの」といって反論した。これには思わず笑ってしまった。

 ウルトラマンのショーが近くの大型スーパーであり、息子と見に行った。司会者の人が、初めにクイズを出して、「わかる人は手を挙げて」といったら、みんな一斉にハイ、ハイといいながら、手を挙げた。息子も同じように声を上げながら手を挙げた。「すごいな、わかるんや」と聞くと、息子は振り向きざま「それがわからんのよ」といった。

 親父とお袋と旅行に行ったさいに、温泉で、僕は息子に「じいちゃんの背中を洗ってきてやれ」といったら、素直に親父のところに行って背中を洗い出した。親父は喜んで「背中を流してくれるんか」といったら「おとうさんがしろって、いったから」といった。苦笑い。

 千と千尋の神隠しの映画を見にいったら、最初の頃のシーンで、怖い場面があり、思わず息子は「こんなところ、くるんじゃなかった」といった。

 父の日に教室で、それぞれ自分のお父さんのファーストネームをいってお父さんを紹介することになっていたらしく、それぞれ子供たちは「ひろしです」「たけしです」というように紹介していった。息子の番になると、息子は「おとうさんです」と答えた。

 口癖が「僕が子供の頃」お前幾つじゃい!
 
 いちごをやったら、「種をとってくれ」といった。

 著名な写真家の今森光彦さんの講演があり、妻と息子が参加。最後に質問がある人と、今森さんがいうと、はい、と手を挙げて、指名されると、今森さんに対してなぞなぞをかけた。

 年長組の運動会。年中組で担任をしていたが辞めた先生が見に来ていた。我が息子を見て「あの子誰」といった。夏休みにマックとかに頻繁にいっていたようで、あっという間にデブになり、1年前とは見る影もなくなってしまっていた。

 卒園式の日、みんなひとりづつこれからの抱負を述べるようになっていた。たとえば「お菓子屋さんになりたいです」とか「勉強頑張ります」とかであるが、我が息子は「鬼退治にいきます」と答えて皆から失笑をかっていた。ちなみに小学校の卒業式でも同じようなイベントがあり、その時は「人間国宝になります」といった。その頃には僕はもう生きてはいまい。
 

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