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異星との交流(ショートショート)

 惑星Hから地球に向かって使節団が送り込まれた。通訳として地球の元宇宙飛行士ジョン・マンジーが同乗していた。彼は惑星調査のため地球から派遣されていたのだが、途中難破してしまい、惑星Hの宇宙船に救助されたのであった。
 ジョンは惑星Hにおいて、さまざまな学習を経て、今まさに凱旋の気分で宇宙船に乗り込んだ。
 使節団は3隻。まっすぐに地球に向かっていった。
 地球の方でもこの船団をキャッチしていた。敵か味方か、判断しかねていたところに、ジョン・マンジーからの連絡がきた。
「こちらH星からきた平和の使節団である。攻撃はやめて下さい。H星の大統領からの親書を持参しております」
 立派な地球言語で喋ってきたので一同は安心した。そしてまさかのために軍隊には待機させながらも、歓迎のセレモニーの準備を始めた。
 宇宙船は地球に着いた。早速ペロリ総督から大統領親書を渡すべく、儀式が執り行われた。親書の内容についてはジョンが別に通訳した文書が渡された。
 かいつまんでいうと、これからなかよくしていきましょう、貿易しましょう、文化の交流を広げましょう、といった内容だった。
 H星の人たちは盛んに体を動かして会話をしていた。いわばボディラングエッジである。一種の手話といえば、手話なのだろうが、アクションがすごく派手なのである。言葉は発しなかった。声帯がないらしい。
 だからH星の人とジョンが会話しているのをみると、まるで、踊っているかのようであった。
「これは面白い民族だ」
 大統領も最初はえらく気に入っていたが、握手を求めると、えらく機嫌を損ねてしまった。
「そのポーズは駄目です。決闘の申込です」
 ジョンが慌てていった。
 びっくりした大統領は、下手に体を動かせないことに気づいた。もし動いたら下手に相手を刺激することになるかもしれないからであった。
 彼らは盛んに踊りまくり、それをジョンが通訳する。大統領他は微動だにできない状況になっていた。
「握手はどうすればいいんだね」
 大統領が聞いた。ジョンは気軽にやってみせた。
「こうすればいいんです」
 相手の股間と股間を握り合うのである。
「冗談じゃない。そんなことできるかね」
 大統領は憤慨して、テーブルを叩いた。それにH星の人たちは反応した。一斉に大統領の股間に向かって全員がさわりに集まってきたのである。
「何だ、今のは」
「皆さんを歓迎するという意味です」
「やめてくれー」
 大統領が両手で股間を守るようにして庇い、叫んだ。その瞬間空気が変わった。
「断交すると今、大統領はおっしゃいました」
「そんなことはいってない」
「では股間を大きく広げ、彼らに差し出しなさい」
 生まれてこのかたこれ以上の恥辱を味わったことがあるだろうか。大統領は涙を流し、彼らの行為をなすがままに我慢した。やがて皆から胴上げをされた。
 文化の違う国と接するのはどれだけ大変なのか、体で身に沁みた大統領であった。

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