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君色想い-キミイロオモイ-

「僕は理論的な人間」「論理立てて話す」
「感情・感覚で話す人は僕の人生にいらない」
酔っぱらって、そう私を拒否したキミ。

寝室に行って何事もなかったように寝るキミ。
眠れずに、寝室からリビングに一人戻り、悲しくて
先ほどの言葉を思い出しながら泣く。

もう誰にも否定されたくない。そう思っていた。
まさか彼からもそんな言葉を聞くだなんて青天の霹靂。
到底眠ることなどできず、音楽を聴きながら、心を静める。
気を紛らわそうとただ聴いているだけで音などしない。
心ここにあらず。無音の世界に取り残されていた。

しばらくすると、私が寝室にいないことに気付いた彼が
起きて来て「何をしているの?」とリビングに居る私に問いかける。
正直に『キミに酷いことを言われて悲しくて眠れない』という
私に「何があったの?」と、訊く彼。今夜私が言われた言葉を
そのまま伝え『否定されて悲しい』と素直な気持ちを言った。

彼は「え、そんなことボク言っていないよ」「早く寝よう」と。
お酒のせいか、人格が変わるのか、それともすっ呆けているのか。
何事もなかったかのように振る舞う彼に『確かに言ったもん!』
『私をいらないって言った!』と、言いつつ、一緒に寝室へ。

腕枕してもらいながら、言った言わないを討論しつつ。
「根に持つタイプなんだね」とポツリという彼。『そう根に持つ!』
『だから上書き保存!』と、普段は「身体が熱い人は嫌だ」と
くっつくのを嫌がる彼に、ギューッと抱き着き、ハグして貰いながら
その日は眠りについた。そして朝は何もなかったかのように営み。
朝になると元気になるらしく「何回でもできる。」「しよう」と。

キミは色の選択が奇抜で。ビビット色のオレンジのタンクトップや
原色を好んで服や下着を持っていた。私も原色は好きだけれども。
キミには似合わないなぁと思いながら、彼の趣味だし、まぁいいか、と。
スケスケのパンツやインナーにも若干ドン引き。

ゴルフを始めた君が選んだのはブラッドオレンジ色に黒のドットが
入ったスポーツ着。なんとダサい。『それ、普通選ぶ??』と心の中で。
思いつつも『いいね、いいの買ったね』と「セールで安く買えた」と
喜ぶ彼に『お得に買えてよかったね、買い物上手!』と褒める私。

本当はそんなの私の趣味じゃない。モノクロのシックな感じが好き。
車が好きな彼はカスタマイズしてエンジン音は爆音。近所迷惑じゃん。
『ちっともよく聴こえない』と思いつつ、彼が好きならいいか、と。

でも、玄関から出て、まだ駐車場も向かう前から、遠隔操作でポチッと
エンジンを付けたときに『うるさくない?苦情来てないの?』と
つい、本音を言ってしまったことがある。彼は怪訝な顔をして
「言われたことはない」と。「大してうるさくない」と。
あれがダメだったのかな?

合わない。何もかもが合わない。だけれども、居心地がいい。
君が作ってくれる朝ごはんも淹れてくれるコーヒーも、幸せ。
時間がなくて駅まで送れなくて「毎回悪いな、って思ってる」
そう彼に言われても『いつも迎えに来てくれてありがとう!』
『朝ご飯もコーヒーもいつもありがとう』どれにも感謝な私。
彼にとっては普通のこと、何もしていないと言う。

そんな彼にとっての当たり前が、私には大切で。
大事にされているような感覚になり、勘違いしちゃった。
君が遊びであったとしても、ただ気まぐれで優しくしただけでも
好きになっちゃうよね。好きだと思ってしまった。愛おしいと。

初めて抱かれた日「ねぇ?どぉ?」「気持ちいい?」と
私の中に彼のものを入れながら訊いてくる君にドン引きしたことは
この先も君に伝えることはない。だろう。そして、そんな
ドン引きしたはずの君に、私はなぜか心を奪われた。

この歳になって、オツキアイした人は確かにいる。
付き合わず、そういう関係。大人の関係になった人もいる。
たしかにうまい人もいた。メチャクチャ気持ちいい人も居たよ?
それでも、Hは好きじゃなかった。Hは気持ちがイイ、より痛い。
無理やり入れて来ようとする人。大きければいいと思っている人。
激しければそれでいい。と、勘違いしている人が多かった。

キミは違った。大きくもなく、むしろ小さい。
なのに、私にはよかったんだ。ちょっと物足りない。
でも、今まで感じたことのないオーガニズム。
もう、戻れない。離れられない。すべてが君に。
君一色に染まる。染まることが怖かった。

だから素直になれず。君が歩み寄ってくれていたときに
曖昧な、思ってもいない言葉を告げた。バカな私。
『君のこと好きかわからない』『人としては好き』
『君との関係が崩れるくらいなら何もなかったことに』
『関係が拗れるくらいならお互い忘れよう』と。

そんな私が後から『好き』と言っても君は信じてくれない。
「付き合ってもいないのに、何度も抱かれるなんてバカな女」
そう言い放つ彼。ただ、言動が一致しない。Hしすぎて
身体を傷め歩くのを辛そうにしている私を心配しマッサージ。
いつも通り、朝ご飯を作ってコーヒーを淹れてくれる。

極めつけ「駅じゃなくて家まで送るよ?」そんな態度に私は
内心で『お前は彼氏か!?なんだんだ??』と突っ込む。
そんな君が唐突に、私を文字通り拒否。唐突じゃなかったのか
毎日送って来ていた意味のないスタンプもなくなり。
始めたゴルフの打ちっぱなし練習の動画も送らなくなった。
タイミングが悪かったんだよね。引っ越しがきっかけか。

動画の制限を掛けていたから、観れなくてそれを伝えた。
Hした次の日の夜、あまりにも寝ていないのと薬が効いて彼からの
スタンプやLINEをなかなか返せなかった。それが続いた。
不安にもさせた。今まで、動画でもスタンプでも一度も
見れないだなんて、この6年間彼に伝えたことはない。

彼の思い通りにいかなかった。彼のタイミングを私は逃した。
合わない奴、と認定されてしまったんだと思う。仕方ないよね。
彼の家に行くようになった最初の頃、日頃のクセで何もないのに
目の前でスマホを触って居たら「ずっと携帯触っているよね」と。
言われてから、極力触らないようにしていた。気を付けていた。

「依存されるのはキライじゃない」
「女友だちともある意味大人になったので、できる」
「付き合った彼女は少ない」「ある時から数を数えるのをやめた」

どの言葉も私には理解しがたいもの。
「数えるのをやめた」は、わからなくもない。
依存されたかったのか?依存したかったのか?
友人としての君はとてもいい奴だった。加えて
男としても、とても魅力的。バツイチだとしても
その優しさと頭のよさで十分女性が寄ってくる。

きっと君は可愛い娘か、頭のいい女性を選ぶだろう。
それでいい。それがいい。私のことなど忘れて
奥さんのこともよき思い出にして、今を生きてくれれば。
出逢えて幸せだった。束の間の、幸福。

君と過ごした時間は、数えるほどしかないけれども。
キミイロオモイ、君との時間は最高だった。何度思い返しても
感謝しかない。拒否された本当の理由はわからないけれども
それでも、君と居た時間はこれまでにない幸せなとき。
最高の幸せをありがとう!

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