奇抜髪型の彼と学校、その理由
夕暮れが早くなり、4時を過ぎた頃には空が夜へと変わろうとしていたときに僕は彼と出会った。
駅から家へと歩いていると前方から高校生の集団が歩いてきた。近所の高校の下校時間にどうやら重なったらしい。
歩道は2人が横になるほどの幅しかなく、集団であるく高校生たちとすれ違うのは至難の業だが(特に下を向いてあるく子)肩を引いて半身になり避けていった。
しかし、その少年集団の中に妙な少年がいた。
髪型がおよそ高校生らしくないのだ。
チリチリにパーマがかかった彼の髪は肩まで伸び、とうてい身にまとう詰め襟の高校の制服と似つかわしくない髪型。
まわりの高校生たちはというと肩はもちろん耳にも眉にもかからないほどの短髪で、パーマもかかっていない。
彼一人その謎の出で立ちなのである。
普通、特にこのあたりでは厳しいといわれている高校において、そのような髪型許されないのではなだろうか。
それとも自由主義をいきる現代の考えのもとで表現の自由、髪型の自由と訴えたのだろうか。
だがそれにしては髪が遊んでいるのは彼一人だ。何か変だ。私は気になった。
その日から何度か見かけたがその理由を解明することはできず、しかし、本人に直接聞く勇気もなく僕は優しそうな顔つきの他の学生に聞いてみた。
「ねえねえ、あの髪長い彼先生に注意されないの?」
「えっと、詳しいことは知らないですけどたぶんもうすぐ先生から言われますよ」
ふむ、やはり学校があの髪を認めているわけではないのだ。
しかし、肩にかかる段階になってようやく言われるとは先生が生徒を見ていないのか、それともなにかよほどに理由があるのではないか。
その翌日、僕は道ばたで大人と話す彼を見つけた。おそらく相手は先生だろう。
とうとう注意されるのだろうか。
彼がどんなことを話すのか興味があり、悪いとは思いながらも聞き耳を立ててしまった。
そして僕は教員が生徒と話すのであれば学校内であればいいのだと言うことをすっかり失念していたことに気がついた。
「おい、君。君はなぜうちの高校の制服を着ているんだ」
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