道化の手紙 <後悔Ⅱ>
ー反省はしないつもりだ。
だからこれは後悔であり、澱だ。
もう二度と還らぬを想って泣く。
そう、
ただ泣くという行為のために用意された記憶とは、
一体俺達にとつて耐えられる苦しみなのだろうか?
伊弉諾とて、
あの伊邪那美の死という悲劇に応接して得たものと言えば、
太陽と月と、
そして涙ばかりではなかつたか……
この場合太陽がなんだ?
月がなんだ?
それぞれが悲しみと溶け合うばかりである!
それぞれが、
この世が……
さてもいよいよ今となっては、
あの天孫らの神話について、
誰もがドグマも熱狂も、親愛さえも持っちゃいない。
あるのは薄汚れた西洋の方程式と、
もやは親愛ではないその愛というものの偽装それだけだ。
“ねばならぬ”という魔術ほど、我々を安心させてくれるものはない。
人間諸権利の章典も、自由を得る道も、最早我々は信じていない。
信じてなぞいないくせに!
だがもう止そう。悪態つくのもこれまた同じことに過ぎぬから。
俺のコンフェシオンを聞きたまえ!
俺は俺の神に祈るのだ。俺が俺を絞殺してしまわぬようにと。もっともそれはあてが外れているかもしれない。俺の希っていることはそんなことではないかもしれない。
兎に角この後悔。わけてもどうにもし難い後悔。
俺は信ずることしかできぬ、
愛を、
決心を……
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