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【読書】海外SF小説入門 ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

読書家たるものの嗜み

日本の近代小説を読んでいても、文化的背景がわかっていないと理解が進まないことがあります。
海外の小説はいわんやをや、です。

昔から意味づけることや理解することに取り憑かれてしまったところもあり、あまり海外の作品は触れてきませんでした。

ただこの歳で諦めきれないカテゴリがあります。
それが海外SF小説です。
この分野はサイエンスや思想を語る人々によって譬え話としてスマートに語られたり、映画などを語るにしてもSFの原作が必須だったりします。

勝手な偏見ですが、現代のカルチャーに詳しい読書家、もしくはクリエイターになる人はみんなSFを通っているように感じてしまうとこがありました。

そういったセンスのある人々への憧れから海外SF小説は読みたいと常日頃考えていたので、今回チャレンジしてみました。

『夏への扉』について

以前の僕ならば、新書や入門書など、概略的なことを学んで周縁部の知識を固めてから着手しがちでしたが、乱読する人への憧れから、なんとなく本書を手にしました。

本書を手にした最も大きな理由は、面識のある大学の数学の先生が大好きな作家としてハインラインをあげられていたためです。ウィキペディアから引用します。

SF界を代表する作家の一人で「SF界の長老(the dean of science fiction writers)」とも呼ばれ、影響を受けたSF作家も数多いが、物議を醸した作品も多い。
(中略)ハインラインは1940年代から自分の作品を「サタデー・イブニング・ポスト」等の一般紙に載せた。この結果としてSFの大衆化が進んだのは、ハインラインの功績の一つである。SF小説でベストセラーを産んだ最初の作家でもある。アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラークと並んで、世界SF界のビッグスリーとも呼ばれていた。
Wikipedia

この内容をみると、最初に読む作家としてこれほど適切な作家はないと言い切れそうなくらいに王道の作家です。

日本の誇れるアニメコンテンツである機動戦士ガンダムの元ネタの一つにハインラインの『宇宙の戦士』があげられるなど、SF界のみならずその後の世界に大きく影響を与えた作家と言って間違いではなさそうです。

そしてこの作品についていうと、昨年2021年に日本で映画化された作品の原作本でもあります。
※まだ映画は見てません。

日本で人気のある作品

話は脱線しますが、この映画化というのは興味深くて、本書は他国ではあまり代表作として挙げられるものではないらしいのですが、日本で独自にこの作品は評価されとうとう映画化までされてしまったらしいのです。


詳しく調べてないので、何故日本でここまで愛された作品なのかは理由は定かではありません。

『夏への扉』という日本語翻訳タイトルも影響しているかもしれません。
詩情に溢れた表現です。SFとは感じさせないような爽やかなイメージで、私のような門外漢の人間が手にしてしまうほどに魅力的です。

他にも、猫のピート(重要な登場人物?動物?)の存在も日本のヒットには大きかったかもしれませんし、タイムトラベル(タイムリープ的な要素もある?)と恋愛を軸に、主人公がジェットコースターのように浮き沈みするという王道と感じてしまうほどに分かりやすいストーリーも重要な要素かもしれません。
しかし、どうして日本でヒットしたかはなかなか説明が難しいように感じました。

『夏への扉』の魅力

本書は「夏への扉」を探していた、というコネチカットの冬のイメージからスタートします。
とても寓話的で映画的に表現しやすそうな回想シーンだと思います。全くSFとは関係はないのですが、この回想シーンは、タイトルの抒情と同様にとても良い描かれ方だと思いました。
この美しいスタートで引き込まれる人も多いのだと思います。

一言で言ってしまうと、寒い冬から暖かい夏へと向かう物語です。
主人公ダンは、愛する恋人とこれまで専念してきた事業を失ったところから物語は始まります。
全てを失った冬の時代から冷凍睡眠を経て、色々と苦労があってタイムトラベルでダンは夏への扉を開く、というストーリーです。

SFは書かれた時代によって科学の進歩の状況が違うし、映像へ落とし込みにとても困難さはつきまとうのでしょうが、ストーリー展開だけでいうと、とても映画に向いているように思いました。

ちなみに意外と猫が登場しませんでした。猫との絡みを期待すると肩透かし食らうかもしれません。

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