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現代川柳連作「狂人の散歩」


今年の7月下旬から10月下旬頃まで現代川柳を500句ほど作句した。
私は今芸術系の大学院に通っており、その大学院の学内創作誌に掲載する為にコツコツと作りためていた。

その500句の中から64句を厳選し、一応の現代川柳連作が完成した。
タイトルは「狂人の散歩」

ロックンロールの詩情及び伝統俳句の描写法並びに超現実・幻想性の抒情、この三つの結節点を川柳という舞台に求めた。

私が思う狂人の散歩の際の原風景である。


「狂人の散歩」

狂人の散歩ぐにゃりと歪む夜

ジミヘンドリックスの面した野犬

永久機関タバコ屋にのど飴を置く

口笛が飛び交いトタン屋根に跳ね

伝わらぬ遠い団地の泣きじゃくり

絶望が団地の裏に干されをる

来世では一緒になろう鳥として

あゝと叫ぶ屋根淋しくて揺れている

雨原理主義を貫く農家あり

人間は理由を言わず亡くなれり

問題の僕が汚した問題集

外国の言葉で悪く言われたし

王様のような全裸の者多数

人見知りする心臓を開ける者

フルチンを恥じぬ野犬の反骨心

蝉もまたパンクロックをする生命

ゴキブリに避けられている者多数

あかさたなあからさまだなあなたがた

山彦の少年の持つ拡声器

俺か俺以外か空の広大さ

魂の木より落ちてきた努力

魂を起動しますか はい・いいえ

屹立せよ夕日の小人屹立せよ

忘れたいことありゲリラ豪雨待つ

いらぬ毛を切りて美人にしてかへし

夕方の鳩は虚しい僕になる

毒蜘蛛を宙ぶらりんのまま生きる

鮭フレークほろほろこぼれ落ちる過去

人間を混乱させる赤蜻蛉

友殴り我殴り木は動かない

七月の電車に鼻が落ちている

戦争と育児で歪む祖母の皺

鮮血の斑なキングクリムゾン

執念が立ち漕ぎしてやがる

笑い疲れる飛魚の群れ

蠢いた恐怖は海老の踊り食い

便箋の歪み堪えられぬ片頭痛

散歩せよ地震起こさぬようにせよ

野良犬と同じ孤独が立ち上がる

爽やかに論ず蚯蚓の断面図

芝生から生える人間から芝生

少年の吊り目からほとばしる自我

まだ序の序序々の序々なる塗中録

画用紙に殺したはずの目白飛ぶ

でこぼこな違う女と走る道

戦争はわがままで我あるがまま

時間はまるでダリの絵具

納得のいかぬ拳が冷えている

仕方なく乾いた蝉を蹴る男

押入の静かに泣いた革命児

木を切って切って切っての哲学す

秘密とは黄色の蛇が抜ける道

歯軋りをして約束を守るという

井月が糞尿に倒れる音だ

ステッキを振った老体夜と化す

不揃いな雑木と似た親子連れ

棺桶の安全ベルト外されず

モノクロの写真じゃ表せぬ浮気

炭鉱のカナリア黒い手を舐める

バーテンダーの勝海舟がいる

白シャツを鋭利な声に引っ掛ける

鯊釣って二匹の顔の出来不出来

琵琶の音を咥えて消えた木葉木菟

仙人が墨絵よりよろめいてくる

以上

12月下旬に印刷され雑誌となります。その雑誌を貰ってやってもいいという心優しき方がいらっしゃいましたら喜んでお送り致します。

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