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立ち食いそば屋のラーメン日記

【立ち食いそば屋のラーメン】

人間寒く感じるとお腹がとても空いたように感じる。嗚呼、スタンダードな醤油ラーメンが無性に食べたい。頭の中で謎の声が「ラーメン、ラーメンが食べたい」と連呼している。

仕事帰り、お腹を空かせて寂しい気持ちで家へ帰ろうとすると、駅のホームからお出汁のいい匂いがしてくる。いい匂いの方向に目をやると、そこには「駅そば」があった。メニュー表に目をやると、「中華そば」の文字があるではないか。

「これは食べるしかないぞ。」と頭の中の声に従って、駅そばのカウンター前に立っていた。


駅そばなんて、何年ぶりだろうか。亡くなった母親と一緒に出かけた後に食べたのが最後だった気がする。

中華そばを注文する。待っている間、スマホを見ていようと思っていたら、あっという間に中華そばが私の目の前に出てきた。さすが、駅そば。注文からの提供が早すぎる。

見た目はいたってシンプル。太すぎず細すぎない麺に中華スープ、大きめチャーシュー2枚とあとはお葱。

一口スープを飲むと、やさしい味の和風出汁が利いた醤油味の中華スープだ。
次に麺を啜っていく。コシのない優しい食感の麺。昔、父親がトラックの屋台で買ってきた醤油ラーメンを思い出した。屋台のラーメンも、コシのない「やわやわ」な麺だった。母親に内緒で父親と一緒に食べたのが印象深く残っている。やわやわ麺だったけど、美味しかったなぁ。なんて、昔を思い出しながら、麺を啜る。

麺を啜りながら、スープを飲み干していく。チャーシューは自家製らしく、とてもジューシーだ。これは、ビールに合うと思う。

お腹がいい具合に満たされたところで完食した。家に帰るために駅のホームに出たら、昔のことや親の事を色々と思い出し、一人しんみりとした気持ちになった。

昔はよく親と喧嘩したが、今の歳にならないと分からないことが沢山あった。切なく淋しい気持ちになりながら、電車に揺られて家へ向かう。家に帰って旦那と一緒に呑もうと思ったのであった。

《完》

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