新たなチーム、マーケット、ビジネスアイデア…起業準備に進展あり?!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学15か月目
本記事「TOEIC250点日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記」では、アントレプレナーシップ(起業家教育)の分野で世界No.1のバブソン大学にて、MBA生としてのキャリアをスタートさせた及川さんに密着し、バブソン大学でどのようなことに挑戦するのかや、そのプロセスで直面する課題・困難にどう立ち向かうのか、そこから得た学び等を追っています。
今回のインタビューは、本シリーズの第12弾となっております。バックナンバーはこちらをご覧ください!
第1弾:TOEIC250点!? 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学1か月目
第2弾:「英語上手」ではなく「コミュニケーション上手」を目指せ! 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学2か月目
第3弾:大ピンチ!学費が600万円も足りない⁉でもリスクがあるから面白い! 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学3か月目
第4弾:想定内の人生なんてもったいない!環境を変える秘訣は「アウトプット」にある! 留学4か月目
第5弾:髪の伸びとビジネスの伸びは比例する?!1学期乗り越えた日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学5か月目
第6弾:波乱のコンサルティングプロジェクトと自らの起業に邁進!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学6か月目
第7弾:ビジネスパートナーとの起業挑戦の軌跡に迫る!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学7か月目
第8弾: 誘惑のない(?)ボストンで究める険しき起業の道!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学8か月目
第9弾: 1年目修了総集編!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学11か月目
第10弾: 一時帰国で過ごした鍛錬の夏休み!2年目へ突入した日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学13か月目
第11弾:「不安はない」臨戦態勢を整え臨むラストイヤー!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学14か月目
シリーズ第12弾の今回は、2年目の前期を終えられた及川さんから、学期の振り返りと冬休みの計画について伺っていきます!
前期の授業を振り返って、いかがでしたか?
及川:
前期は4つ授業取っていまして、新しいビジネスを自分たちで考える、ニューベンチャークリエーションという授業、アメリカで起業する際の資金調達の方法を勉強するファイナンシングの授業、残りの2つはSTEMと呼ばれる科目群から選びました。
STEMはサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの総称で、いわゆる技術職に通ずる科目です。これをある程度履修しておくと、卒業後アメリカに滞在できる権利を2年間延長することができるシステムがあり、僕もそのシステムを利用するために授業を取りました。具体的には、マーケティングアナリティクスという、ソフトウェアを使ってより効果の高いマーケティング施策を提案する授業と、プログラミングの授業を受けています。
全て前期で完結する授業です。
それらの授業はどのように評価されるのですか?
及川:
ニューベンチャークリエーションでは、自分たちが半期かけて作り上げたビジネスアイディアをまずクラスメイトにピッチします。そこで選ばれた上位3チームが、今度はボストンを拠点とする投資家3人に対してピッチするチャンスをもらい、実際に投資してもらえるかを競うという授業でした。いわゆるテストではなくて、実際のビジネスピッチで授業が完結していくというものです。
ファイナンシングはプレゼンテーションで評価が決まります。クラス40人で8チームに分かれ、それぞれのチームが、今アメリカの市場で起業した場合に有効だと思う資金調達の方法を調べてプレゼンテーションするという内容です。他のチームのプレゼンテーションを通して、さらに知識を得た状態でクラスが終えられる仕組みになっています。
一方でプログラミングの授業は試験です。出された問題に対して正確なコーディングをし、求められている値を返せるかが問われます。
マーケティングアナリティクスの場合は、両方の側面を持っていて、まずプログラミングで正確なデータを出せるかが問われ、加えてそのデータを基に考えたマーケティング施策のクオリティを問われます。
それぞれ違った評価方法ですが、プレゼンテーションやチーム課題が多く、ビジネススクールらしい授業です。
1年目と比較して2年目の授業はいかがでしたか?
及川:
夏のインターンシップを通して、英語でコミュニケーションすることに対して1つハードルを乗り越えた感覚があり、それが学びの質を高めている感覚はあります。
決して英語がうまく喋れているわけではないんですが、しっかり意思疎通をする、ないがしろにしないようになりました。。クラスのディスカッションに参加する難易度は依然高いものの、つたない英語でもチームの会話の中に入っていく、入れてもらうアクションがとれるようになったことで、非常に学びが濃くなっています。インプットしたものをアウトプットする機会が増えてきている感覚です。
授業で苦労したことはありましたか?
及川:
ニューベンチャークリエーションの教授が、実は1年目に取っていたコア授業と同じ教授だったので、去年は聞き逃した分、学べなかった分を、再度学ぶことができて、いい機会になりました。一方で、ビジネスアイディアを作るにあたり、自分に特にバックグラウンドがない分野まで考えていかなければならず、苦労しましたね。
僕は前職が営業なので、去年であればセールスやマーケティングのパートだけを担当していました。しかし今回は、ファイナンシングや資金のプラン立ても担当したので大変でした。アメリカのカルチャーもあまりわかっておらず、ビジネスや資金調達に対する肌感が全くない中で、プランを組み上げていく難しさがありましたが、そこは同時並行で取っていたファイナンシングの授業が非常に役立ちました。
ファイナンスの授業でインプットできた分を、ニューベンチャークリエーションでアウトプットするというように、授業が相互作用して進んでいったので楽しく学ぶことができました。
プログラミングの授業は、ChatGPTにすごく助けられました笑。一つ面白いと思ったのは、ChatGPT4.0がリリースされ、非常に精度の高いプログラミングの答えをAIが出してくれるようになったことを受けて、教授が学期途中でテストスタイルを変更しました。通常授業計画や試験内容についてのシラバスは、学期が始まる前に教授からリリースされるものなので、これはイレギュラーな対応でした。変更後の試験内容はChatGPTを使って、いかにクオリティが高いプロンプトを生み出せるか、というもので、すごく面白いし現実に即した試験だなと感じました。
日本の教育機関でこういった柔軟な対応はなかなか見られないと思います。「スモールスタートアップで資金が限られていたとしても、使えるリソースを全部使って泥臭くやっていきなさい」と言っているバブソンらしさが体現された瞬間でした。
授業以外ではどのような活動をされていましたか?
及川:
基本的には夏休みから継続して起業準備をしていました。あと半年で卒業ということで、非常に危機感持って進めています。
あとは大学生のときにやっていたテニスを久々に再開しまして、ボストンでのネットワークを広げています。
起業準備の進捗はいかがですか?
及川:
ビジネスアイデアも市場もピボットしました。
去年は、アメリカで自分のやりたいことをやろうとしていたんですが、今年から日本のマーケットに向けて、自分の持つスキルセットの中で一番付加価値を提供できるものをまず始めようと考え直しまして、これが最も大きなハイライトです。
また、ピボットに合わせてチームメートも変わりました。
今は新しいチームで、新たにカスタマーインタビューを実施し、ビジネスコンセプトを作り、プロトタイプを作っているところです。この後の冬休みで日本に帰って、作成したプロトタイプをもとに、本当にお客さまが欲しがるモノを作れているのか、というコンセプトの確認をしたいと思っています。
なぜ市場を日本に移したのですか?
1つは自分に親和性がある場所で戦いたいと思ったからです。親和性がない場合、まず学ぶ時間を取る必要があり、そこで得たものを、プロジェクトに反映していくことになります。しかし、もともと親和性があるものであれば、比較的学びに割く時間が少なくて良いですし、学びのスピードも速い。そのため、事業展開のスピード感から見ても望ましいと思いました。
もう1つがファンディングの観点です。シリコンバレーバンクが潰れてから、今アメリカの資金調達市場は非常に厳しい状況です。金利も上がっており、投資家は積極的に投資をしようとしません。一方で日本は、スタートアップ5ヶ年計画など、行政が積極的に機関投資家にお金を渡してるような状況にあります。自分のビジネスにおける資金調達の難易度が全然違うだろうということで、日本の市場にピボットすることを決めました。
チームはどのように変更されたのですか?
及川:
以前パートナーとして共にインタビューしていただいたこともある小田切さんは、社費でアメリカに来ており、半年後には所属元の会社に戻らなければいけません。卒業後の進路が違う中で、今彼がフォーカスしたいことと、僕がやらなきゃいけないことに相違が生まれ、1つのチームとして同じプロジェクトを進めていくことがだんだんと難しくなっていたのが背景としてあります。
そんな中で、ボストン大学に通われている日本人の方とお会いする機会があり、彼は僕と同様に私費留学で卒業後も起業を見据えているとのことだったので、一緒に何かを始めよう!ということになりました。。彼は、エンジニアバックグラウンドで互いに違うスキルセットを持っている点はチームとしての強みと感じています。
今は彼と週に2、3回のミーティングをしながら、ビジネスを進めています。
以前のチームでは、小田切さんは金融のバックグラウンドを活かし、ストラテジー全般を担当してくれていたのですが、僕ら2人ともビジネスサイドの人間だったことで、チームとして開発に弱みがあったのも事実です。ビジネス側の話は進んでも、プロダクトは外注するしかなく、ビジネスの実態がついてこない苦しみがありました。
一方で今組んでいるチームでは自分たちでプロダクトを作れる力があります。僕が進めるビジネスアイディアに並行し、同時にプロダクトもついてきてくれるような状態なので、ビジネス自体の進みが非常に早く感じています。
実際の進捗も早く、10月末にビジネスコンセプトを決め、インタビューとデータ実証を行いました。僕がビジネスコンセプトをまとめる一方で、パートナーにはデザインやプロトタイプを作ってもらいました。決まったビジネスコンセプトをプロトタイプを用いて確認するフェーズに入ったので、POC(Proof Of Concept)に協力してくれる企業探しを行いました。運良く、この冬休みに協力してくれる会社が見つかりました。1年前の僕と比べると嘘みたいな早さで進められていて、最近すごく楽しいです。
事業を進めるうえで、1年前と比較してご自身の成長を感じるポイントはありますか?
及川:
去年は、本当に何も知らなかったんですよね。日本で営業だけを6年間やっていて、ビジネスを始めるときに必要なお金や人、プロダクトのことが何にもわかっていない状態だったので、全て手探りで進めていました。ただ、結果として実際にスマートフォンのアプリを作りましたし、アプリを作るための資金調達やアウトソーシングも経験しましたし、ビジネスパートナーの小田切さんがいろいろ動いてくれた中で自分がどういうスキルが足りないのかを痛感しました。夏のインターンシップでは、逆に自分がどういうスキルを持っていて、どんな価値提供ができるのかを改めて考えることもできました。
そんな1年間を踏まえて、起業の進め方がよりクリアになり、マイルストーンを着実に踏んでいくことができるようになったと思います。
今回もアクセラレーションプログラムに挑戦されるのですか?
及川:
そうですね。去年は、大体10~15のアクセラレーションプログラムに応募し、1つも受かりませんでした。今回も挑戦していきたいと思っています。
これに関しては、就職活動を行なっているクラスメートと比較して、大きく反省しているんです。今、アメリカで就職することはすごく大変でクラスメートの多くは、インターンシップを取るために300から500社に自分のレジメを送り続けています。
一方で僕は起業するからといって、レジュメも出さず、ただビジネスアイデアを進めることに時間を使っていたわけですが、クラスメートが就職するためにレジュメを出す行為は、僕でいえば、自分のビジネスを始めるためにアクセラレーションプログラムに応募する行為だったと思うんです。そう考えると、彼らが300から500のレジュメを出している間、僕は15個しかレジュメを出さなかったことになり、僕のその姿勢は甘かったと、今は恥ずかしく思っています。
数を目的化するのはあまり好きではありませんが、努力値としてもっとできたと感じており、今年は去年以上に挑戦していきたいと思っています。
バブソン大学でメンターをやってくれているインド人の方にも同様の指摘をされました。その彼は、自分のビジネスアイディアをプログラムやインベスターに500通以上出して、ようやく1件の投資と、1つのプログラムへの参加が決まったそうです。通過率が500分の2だったということになりますね。彼から「落ちてももう何も感じなくなるぐらい出しまくって、そういうフェーズになって初めて悩み、落ち込むことができるのであって、君はまだ何もやっていない状態だ」と言われました。自分の行動を悔い改めて、卒業するまでの残り半年間が勝負だと、気合が入りました。自分の中では今、すごくエンジンがかかっている状態です。
卒業後就職をするクラスメートとも交流は深めているのですか?
及川:
1年間一緒に過ごして、就職活動をしてるクラスメートとも話す機会は増えてきています。ただ、自分のアクションに対して刺激をもらえたり、学びになり会話が深まったりするのはやはり起業を目指している子たちが多いです。僕が英語を流暢に話せて、コミュニケーションにかけるリソースがそれほどない状態であれば、もっといろんな子と交友関係を広げられたとは思うんですが、なかなか難しいですね。
それから、自分のやりたいことにフォーカスして、その中で出会う人を大切にしたいという考え方も変わっていないです。その意味で、ネットワークを広げるためのネットワークイベントに行くみたいなことは、あまりしてないです。
冬休みはどのように過ごされるのですか?
及川:
日本のスタートアップの会社とPOCをさせていただくことになりました。いま考えているビジネスアイディアを通じて、再現性のある営業方法を構築することが僕の仕事です。
僕のビジネスアイディアは、日本のセールスチーム向けに、再現性のある販売方法を提供できるソフトウェアを開発することです。今回のインターンでは、ソフトウェアの代わりに、僕自身が再現性のある販売手法を見つける支援を行い、その経験を元に今後ソフトウェアを作っていきたいと考えています。
また、ソフトウェアの方もプロトタイプが出来上がりますので、プロトタイプを用いて、他の顧客への営業も始めていく予定です。近い将来、日本の金融機関やインベスターから資金を集めるために、今回の冬休みで潜在顧客を見つけてくることが目的の1つです。
なかなかてんこ盛りの冬を過ごせるということで、すごく興奮しています!自分がついにビジネスをスタートさせる、その第一歩を明日から踏みに行く、ということに対して、本当にわくわくしていますね。
ありがとうございました。及川さんのビジネスの前進を楽しみにしております!
如何だったでしょうか。本シリーズはこれからも随時更新予定ですので、次回の記事もお楽しみに!
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