中根千枝『タテ社会の人間関係』読んだ
連日の、これだから日本はダメなんだシリーズ。
著者すでに亡くなっているが、インドやチベットなどのフィールドワークを主たる仕事とした人類学者である。どうでもいいことだが、女性初の東大教授だったらしい。
アジアでの実地調査だけでなく、西洋にも留学していたことがあって、そうした観点から日本社会を分析する著作を多数出版しており、本書はそのうちで最も有名なものである。
以下備忘録。
人間関係や共同体を構成する要素は、場と資格にわけられる。日本では場の力が強い。場を形成するのは多くの場合、長くその組織にいる年長者であり、これを頂点としたタテの関係が形成されていく。
「資格」が主体であるときは、なんらかの属性が人々を結びつけるヨコあるいは円環的な関係が形成される。
タテ社会は、ピラミッド型の組織になる。古くは幕藩体制、現代でも大企業と系列企業、政党と派閥と地方支部、広域指定暴力団と下部組織、大学と関連病院などにみられる。
そのメリットは末端が裾野状に広がっていることで、新たな構成員を獲得しやすいことである。末端組織でリクルートすれば無限にメンバーを増やせる。新メンバーの人となりを保証するのは直接の上司であり、その上司の保証をさらに保証するのは、さらに上位者であり、、、という具合に信頼のコストが安い。
ヨコ社会では、直接の上司なんてものはなくて、全員の同意が必要になる。もちろん全員から同意を取り付けるのは現実的ではないから、なんらかの資格、あるいは母がユダヤ人などといった属性、はたまた一定のルールを遵守するといった契約が全員の同意の代わりとなる。
タテ社会は能力や信条ではなく、上下関係における情実でつながっているから、能力が発揮されにくく、上の者の人間性や実力におおいに依存する。頂点に立つ者にそうした実力が備わっていなければ、ナンバー2や3の能力におおいに依存することになる。
タテ社会のもう一つのデメリットは横の関係による協調がされにくいことである。いくつものタテ社会が並立して対立していることは、江戸時代が典型であるように、統治しやすさをもたらす。また本書は1960年代に出版されているが、当時は労働組合が企業ごとにバラバラで横の連携を欠いていたために、力を持ちえなかったようだ。
タテ社会は上下関係がうまくいっていて、かつリーダーが資質に恵まれているとき、乏しいリソースでもものすごいパフォーマンスを発揮できるというメリットがある。いや上がダメなときほど現場がなんとかしてしまうというべきか。
さりとてその頑張りが根本的解決を先延ばしにしてしまう、、、というのもまたよくある話だなあと思うのであった。