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土田健次郎『儒教入門』読んだ

最近わけあって、儒教のことをなんもわかってないなあと認識させられた。そりゃ当たり前で、孔子や孟子の切り抜きだとか、国学に批判される対象としての朱子学しか知らないからである。

そういうわけでニー仏さんのこちらの記事で紹介されていた、『儒教入門』を読んでみたのである。

これまた当たり前のことだが、儒教は時間的・空間的広がりが半端ではないから、経書という絶対的な参照点があるとしても極めて多様で、そして豊かな思想なのである。

それら全てを、この薄い本に網羅するのは困難であろうことは著者のあとがきからもうかがえるが、それでも儒教の輪郭をとらえることはできたように思う。

まず歴史的に、道教、墨家、法家、仏教、さらには西洋思想との相克があった。その相互作用から豊穣な思想や文化が育まれた。

そもそも、儒教の中でも両立が難しい徳目がある。例えば忠と孝の利益相反なんてことが長らく議論されてきたわけだし、それは現代社会でも普通におこりうる問題である。上に立つものが正しくないことをしていたときに尊重すべきなのか、あるいは反抗するとしたらどのように正当化されるのか。。。

朝鮮においてはより保守的な儒教が発展したが、日本では独自の形で浸透していった。まあ本邦らしいといえなくもない。

例えば江戸期に朱子学が武士階級で推奨されたのであるが、その正統論に素直に従えば天皇家こそが王に相応しいということになる。これが、国学とは違う経路で倒幕論につながっていったのは大変興味深いことに思われた。

そう、中国や朝鮮の儒教は血縁を非常に重視するのだが、日本はそのあたりがわりといい加減だ。逆に日本では血縁よりも主君への忠義が重視されるが、中国では二君に見えることが禁じられているわけではない。

このような広大な儒教思想を追っていく余裕は今の私にはないのであるが、なんとかしてその一部でも生きている間に摂取してみたいと思わされたのであった。

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