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『安倍晋三 回顧録』読んだ

日本の政治家がすぐに回顧録を出すのは珍しい。

この回顧録は政治記者の橋本五郎氏らによる長時間のインタビューをまとめたもの。インタビューが行われたのは亡くなる半年くらい前、ロシアによるウクライナ侵攻のちょっと前である。

昭恵夫人のチェックは入っているのだろうが、小池都知事などへの忌憚のない意見なども収録されており、なかなか笑える内容となっている。

また聞き手の橋本氏もたまに意地悪な質問を交えたりしているのだが、的確に反論したり、あるいは素直に間違いを認めたりしている。

周囲を立てつつも、戦うところは戦うという人柄が浮かび上がってくる内容で、読んでよかったなあと思うのであった(KONAMI)。

敵対した人びとを一方的にけなすことはしないのだが、例外は財務省で、まあそりゃそうだろう。私にとって安倍さんの最大の功績は財務省に屈しなかったことなのである。


しかし、一番気になったのはニー仏さんも指摘されていたこの箇所であった。

日本人は一度決めたことを変更するのが苦手ってのを安倍さんもやはり理解していたんだなあと。だから反対が多くても、日本のためにやるべきだと判断したら断行したわけだ。
そして党内がまとまっていれば、不人気な政策で内閣が倒れることはないということも理解していたから、長期政権を築くことができたんである。

ただし、コロナ騒ぎが始まったときはこうした我が国の性質を理解していたんだろうか。学校の一斉休校など厳しめの対策をどんどん導入していったが、世界でも最も遅くまで対策を続ける国の一つになってしまったのである。
正常化が遅れている間に未曾有の少子化などの出血が止まらない事態になっている。まあ安倍さんであれ誰であれどうにもできんかったとは思うけど。


その次に印象的だったのは、岸信介じゃないほうの祖父安倍寛に言及している箇所。安倍さんが生前に安倍寛の話をしているのを見たことがなかった。せっかくなので引用しておこう。

父方の祖父の安倍寛は、戦後すぐに他界しているから、私は直接知らないけれども、私の親父を含めて周囲の人はみんな、安倍寛の話をしていたのです。反戦の政治家でリベラルの象徴のような存在でしたが、その影響を受けている面もあるかもしれません。

実際のところ、安倍さんはリベラルだったと思う。外交安全保障におけるタカ派的な側面が強調されがちだけど、それにしたって以前が異常だっただけで、安倍さんが特別hawkishだったとは思わない。


その他、トランプ、オバマ、プーチン、習近平、メルケルら諸外国のリーダーとのやり取りなどおもしろエピソード満載なので、なかなかおすすめの一冊である。


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