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大空幸星『望まない孤独』読んだ

読みました。

若者の間で絶大な支持を得ている大空幸星なる人物については、恥ずかしながら全く知らなかった。

白饅頭さんのこの記事で初めて知ったのである。

多大なる影響力を持っているだけでなく、かなり真っ当な若者のようで、それじゃあ一つ著書を読んでみるかと思った次第である。


タイトルの望まない孤独とは、人間には独りの時間も必要だ、みたいな積極的な孤独とか孤高と、強いられた孤独や孤立を明確に区別するための言葉である。

本書はまず著者の生い立ちから始まる。こんな素敵な名前で今をときめくインフルエンサーなのだから、きっとキラキラしたご家庭の出身なのだろうと勝手に思っていたが、かなりのハードモードだった模様。

そういう経緯があって慶應義塾大学在学中にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立した。これは孤独から死にたくなっている人向けの24時間対応の相談窓口である。死にたみがマックスになる24時以降も対応できるよう、海外在住の日本人を積極的に登用しているのが特徴だ。

2020年3月に設立されているので、COVID19対策の緊急事態宣言で相談件数どう推移するかがよくわかり興味深い。そら自殺増えるよねって思った。

著者が特に強く批判するのは若年者の自殺件数についてだ。行政や民間の努力などもあって、自殺の総数は減っているのだが、未成年の自殺は減っていない。少子化が進行しているのにだ。なんということだ。

そういうわけで著者は提言書を作って政治家に持っていくのである。なんという行動力だ。そしてこの若者の提言に耳を傾ける政治家がいたのが素晴らしい。自民党の鈴木貴子議員、国民民主党の玉木雄一郎議員など。

そしてついにイギリスに続いて孤立担当大臣の設置につながったのだ。凄すぎワロタ。


もう一つ面白かったのは、今時の若者らしくリベラルな価値観を内面化していることだ。だから若い女性の自殺を問題にしつつも、そもそも男性の方が自殺者は圧倒的に多いと指摘するのも忘れない。
また懲罰的な自己責任論は否定するが、責任という観念をも否定するわけではない。責任を取れない人間と認定することは、その人を劣位に置くことになると明言している。慈悲的性差別主義者とは違うね。

また自殺者は男性が多いが相談者は女性が多いというよく知られている事実も指摘している。弱音を吐くと弱いやつと見做されるから相談できないとか、女性だって社会進出が進めば自殺が増えるだろうとか、それ以上いけない系のことも書いてあった面白かったのである。

こんなすごい若者がいるのに全然知らなかったのは本当に恥ずかしいことだなあ。

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