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長沼伸一郎『物理数学の直観的方法 〈普及版〉 理工系で学ぶ数学 「難所突破」の特効薬』読んだ

この本を読んで経済学は物理学からのアナロジーの要素が大きいと理解した。それと数学の苦手意識が若干だけど薄れた。

というわけで物理学をもう少し勉強しなおしてもいいのではないかと思いつつある。なので同じ著書のこれを読んでみた。

講談社ブルーバックスなのでKindle Unlimitedだよ。

結論から言うと半分以上は理解できなかった。やはりガチ理系数学は簡単ではない。複素関数とかフーリエ級数とかeiπ=-1とかは大学教養レベルすら怪しい私には、どう易しく解説されたとしても理解できるものではない。

とはいえ半分くらいは理解できたともいえるので、いったんこれでよしとしてもいいと思われた。

微積分とかテイラー展開、ベクトルのrotは本書に書いてある範囲では大雑把に把握できた。

またエントロピーの解説はカルロ・ロヴェッリの本よりもわかりやすかった。

著書もいっているように、本書は標準的とは言い難いので、普通の教科書と併用することが必須であるらしい。まあそれは時間をかけてやっていこうと思う。


あとがきはかなり長い。要するに部分の総和は全体に一致しないという話である。

著者の経済数学の本でも言われているけど、部分の総和が全体に一致するという前提でないと解けない問題がとても多いのである。あるいは一致しているような特殊なケースばかり教科書に載っていたりする。

例えば太陽の質料は太陽系の他の天体にくらべて極度に大きいから、太陽ともう一つの天体の2つだけで均衡を考えてもおおむね差し支えない、、、ということにすれば三体問題をいったん回避できる。

こういう発想が300年前から文明の全領域に徐々に浸透し、部分最適と全体最適が大きくずれている分野で大問題をおこしている。
マクロ経済学における合成の誤謬は典型であって、リーマンショックのような大惨事をひきおこした。
近代医学も人体や病因を要素に分解することで発展してきたが、ときに全体のバランスを無視した治療が行われる。

もちろん医学そのものが社会から切り離して考えられているために、コロナ騒動のようなとんでもない人災を引き起こしている。

これは300年前までは科学と哲学が一体であったのに、それ以降は高度に専門化したことが一因だと著者は指摘する。
そこで多くの人々が数学や物理を学べるように、直観的な理解を提示しようと著者は試みているのだ。簡略化といいかえてもよい。ここでもオッカムの剃刀なのである。

もちろん簡略化の正反対である和算を著者は盛大に批判するのである。いまだに和算を延々とやっている中学受験についての意見も著者に聞いてみたいものだ。

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