梅田修『英語の語源辞典』で英語の歴史を学ぶ
英単語暗記において語源は避けて通れない。いや避けてもいいんだけど効率がガタ落ちする。いうなれば部首も知らずに漢字を覚えようとするようなものである。無謀というほかない。
そんなわけで今や書店の英語コーナーには語源図鑑みたいなものが溢れている。けっこうなことである。
本書は語源辞典のようなものが一冊ほしくて書店でいろいろ眺めてから買い求めたものである。著者の梅田修氏は英語を中心とする言語学者で、欧州の地名、人名についての著書が多数ある。
なぜ本書を気に入ったかというと単に語源を羅列しているものではなくストーリー仕立てになっているからだ。
第一部は総論で、英語と各言語の関わりについて記されている。ラテン系とゲルマン系みたいな雑なくくりではない。ゲルマン系なら高地古ゲルマン語、低地古ゲルマン語、北欧語までさかのぼっている。ラテン系の借入語はラテン語と、ラテン語を経由したギリシャ語を区別している。またラテン語も古式ゆかしい文語ラテン語と、ロマンス諸語のもととなった平俗ラテン語を区別している。
その上でローマ帝国時代に流入した言葉、ノルマン・コンクエストで入ってきた単語、ルネッサンス期にやってきた文語ラテン語、ルイ14世の権勢以降に軍事大国あるいは美食とファンションの国としてのフランスからやってきた言葉(これは現代も続いてる)といろいろあって歴史の勉強になる。またローマ帝国崩壊後にアイルランドへ落ち延びた宣教師らによりもたらされたラテン語も少なくないのは初めて知った。
さらには印欧祖語にも触れている。インドとかイランの言葉と欧州の言葉が地続きと頭ではわかっていても納得できないものがあったが、本書を読んで少しばかりスッキリした。
また綴りと発音の変遷という英語学習の最大の障害にも詳しく触れている。まあこれについては大名先生の本を読んだほうがいいかもしれないが半年くらい放置している。
各論では、スピリチュアル、祭儀、権威・秩序、同胞、売買などの各テーマごとに同族語を集めたもので、思わぬ単語が同じ語源だったりして驚く。空skyと靴shoeが同族だとは想像もできないが辿っていくと印欧祖語skeuにいきつくそうな。
神話とか歴史的経緯とともに記載されているので楽しく読める。またけっこうマニアックな英単語も収録されていて英単語マニアとしては嬉しい。
全体としては字が多めで読みにくいし、見たことない単語がたくさんでてくるのでちょっとしんどいが、語幹のイメージがつかめると表音文字の羅列にすぎなかった英文がより活き活きしたものに感じられると思われる。まだ全然覚えられないので想像だけど。
日本語だと文字が目に入った瞬間に文意をイメージできるが英語だとできない。語源を学ぶことでより瞬間的に意味を捉えることが可能になり、もっと速く読めるようになれると期待している。そしてなにより語源を学ぶと昔の人の生活や文化・思想にじかに触れているような気がしてくるのであった。
今回はちょっと硬派な書籍の紹介であったが、おいおいもっと読みやすいものについても書いていきたい。
無料のオンライン語源辞典としては下記の二つが有名。
オーソドックスだが派生語までいっしょに出てくるのが嬉しい。
ツリー形式になってて見やすいが、単語によって印欧祖語まで遡ってくれるのもあれば、めっちゃ適当なのもある。
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