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#374 映画論10|アメリカン・ヒストリー・X

これまた悲しい映画です。
前回紹介したダンサー・イン・ザ・ダークとは毛色が違う悲しさですが、とにかく印象に残る名作で、これまでに何度も見た名作ですので、是非紹介させてください。


アメリカン・ヒストリー・X あらすじ

舞台はアメリカ。
この物語の主人公のデレクは、父親を黒人に殺され、その恨みからかなりの白人至上主義の思想を持ったアナーキーとなります。
胸にはナチス・ドイツのシンボルであるハーケンクロイツのタトゥーを入れて、怪しい組織に入り、とにかく黒人を憎む生活をしています。
そんな感じで今なおアメリカに残っている人種問題がテーマの作品なんですね。

そんなデレクはバスケも上手く、黒人チームのバスケでも活躍して、黒人をコートから追い出したりするんですけど、それを見てデレクの弟のデニーは兄に憧れるんです。「兄ちゃん、カッケー!」みたいな感じですね。
そんな思想が偏りつつも、麗しく仲良い兄弟(他に妹とかもいましたが)なんですが、そんな一家に悲劇が訪れます。

とある日、家で彼女とSEXをしていたデレクですが、怪しげな気配に気づき、窓の外を見ると自家用車前で怪しげな人影が・・・車泥棒!
思わず激おこのデレクは銃を持って家を飛び出し、盗もうとしていた黒人の車泥棒にBANG!BANG!BANG!
で、捕まります。

そんなデレクが3年ぶりにシャバに戻ってくるところからストーリーは始まるんですが、この3年で弟のデニーはかなりハードコアな白人至上主義のレイシストに成長していました。怪しげなネオナチの集会に参加し、レイシストの大人たちと関わるというエリートに。
そして、3年ぶりに戻ってきたデレクはデニーに「もう、あいつらと関わるな」と・・・

「兄ちゃんがいない間、俺頑張ってたじゃん!なんでそんなこと言うんだよ!」とデニーは激おこ。
そこから、デレクはゆっくりと、デニーに色々と諭します。
ここからがストーリーの本筋ですね。


アメリカン・ヒストリー・X の魅力

この作品のテーマは「成長」です。

とにかく人種差別は良くないのですが、文化として根付いてしまっている問題であり、尚且つ近親者を殺されて、憎悪が生まれてしまいます。
その犯人の肌の色は本来であれば関係なく、重要ではないんですが、そこに憎悪が向いてしまうと、まさに「坊主憎けりゃ袈裟まで」になってしまうんですね。

これは日本人である僕らには理解が難しい問題ですが、この辺はそれこそかつての日本の身分制度を綴った「破戒」とか、在日コリアン問題を綴った「GO」とかから学ぶテーマですね。

そんな感じで詳細は省きますが、デレクは刑務所内でのある出来事が原因となり、これまでの考え方を改め、成長することができました。
そうした話を弟のデニーに迎え、エンディングを迎えます。


アメリカン・ヒストリー・X まとめ

とにかくエンディングが悲しいんですが、映画の結末を書くのは野暮なので書きません!是非これは見てほしいですね。

このような人種間での差別はあってはいけないものと簡単に一般論は唱えられますが、実際に生活していく中で許容できる・できないのラインが生まれたり、価値観の違いが生まれて、どうしても起きてしまうことなのです。
それは日本人同士でも起きることなので、人種が違えばもっと顕著に起きてしまう
だからこそ、帰化であったり、移民の受け入れなどは慎重になるべきなのです。社会保障や雇用の問題もあるので・・・

少し論旨が逸れてしまいましたが、そのようなセンシティブなお国事情や人種による違いはありますが、差別は良くないということですし、この映画で伝えたいのはこの内容ですね。

最後に紹介されるレポートが、この映画を綺麗に締めています。

これが僕の学んだこと、僕の結論だ。
憎しみとは重荷であり、怒りに身を任せ続けるには人生は短すぎる。
怒りにそんな価値はない。デレクはいつも引用で文章を終えるのが好きだ。先人の言葉を使うんだ。
最高の言葉を盗んで、補強するんだ。
僕も1つ選んだ。

“我々は敵ではなく友人である。敵になってはならない。激情に流されて、愛の絆を断ち切ってはならない。仲良き時代の記憶をたぐれば、良き友になれる日は再びやってくる”


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