誰かにやってほしいビジネスアイデア③マイシアタースタンド

勝手にひらめく主婦よしえの「こんなのあったら面白そう」というビジネスアイデアを掲載します。面白そうだから誰かにやってほしい。いやもうあるかもしれない。責任は取れません。では第3話です。

第3話”マイシアタースタンド”

今夜は何を観よう。ワクワクしながら会社を出る。そうだ、ポップコーン食べたいな。塩味のやつ。でも家で上手く作れるかな。検索しとこう。

つり革につかまり、片手でスマホ検索する。ハナは社会人2年目、いわゆるOLだ。今日も足はパンパンにむくんでるし、朝ばっちりセットした髪も化粧もヨレヨレ。それでも、一年前の自分と比べたら仕事に慣れてきたと思う。でもそれだけだ。朝起きて、身支度して会社にいって、帰ってくる。この繰り返しだけでこれ以上のことをできそうにもない。

そんなハナの最近の楽しみは夜寝る前に観る、海外ドラマや映画だ。今は医療ドラマの2シーズン目を観ている。あの女医、あの後どうするつもりかしら。ドラマの展開をあれこれ考えながら、最寄駅のスーパーでサラダとお惣菜コーナーの値引きシールが貼られたミートパスタ、野菜ジュースを買う。ポップコーンはレンジで作るタイプが売って無かったので、スナック菓子コーナーから一袋探してかごに入れた。自分で作るポップコーンはまあ、そのうちね。

以前のハナは帰宅したらまず食事をし、そのままスマホ片手にしばらくダラダラしてからお風呂、という生活だったが今は違う。ソファに倒れ込みたいのを我慢してそのままお風呂場に向かう。メイクを落とし、シャワーを浴びる。部屋着に着替えて、リラックスできる準備ができてから夕食だ。もちろん、動画鑑賞を楽しむ為だ。

いつか買おうと思って開けているテレビ台スペースに、テレビはまだ無い。スマホスタンドとテーブルライトだけの、白い一人用のテーブルがあるだけだ。そのうち買うだろう、とハナは思っている。

スマホスタンドに自分のスマホをセットする。今人気の”マイシアタースタンド”というシリーズで、これは映画館スタイル。スマホ画面が映画館のスクリーンになるように、座席や非常口までミニチュアで再現してあるのだ。部屋を暗くして観ると、自分だけの映画館気分が味わえる、というわけだ。

面白半分で購入したハナだが、すっかりマイシアタースタンドを気に入ってしまった。このマイシアタースタンドだと、海外ドラマの大げさな表情が妙に合うのだ。観客として作品と一体感を味わえるような、そんな気さえしてくる。ちっともお洒落にならない狭いマンションの小部屋も、日中は業務に追われてちっともキラキラしていない自分も、忘れて没頭できるのだ。

どうやら同じようにこのマイシアタースタンドにハマる人は多いらしく、売れ行きは好調らしい。今度は有名アーティストがコラボするとか言ってたっけ。そうでなくても「前の座席の人の頭が邪魔で見えづらいパーツ」や「映画館っぽいサウンドが出るスピーカー」など映画館用のオプションも続々出てきている。

さっさと食事を済ませ、バリっとポップコーンの袋を開けた。飲み物くらい健康的に、と野菜ジュースを買ってみたがやはりそれは朝にまわすことにした。ハナは週末用にと冷蔵庫に残しておいた発泡酒をプシュっと開けた。

部屋の電気を消し、テーブルのライトをテーブルの下に置き、スマホをタップして月額登録しているサブスクのアプリを立ち上げる。

都心の狭いマンションの部屋の中、小さな映画館で今夜もひとりで海外ドラマの世界を楽しむハナ。やっぱりあの女医、浮気してたのね?彼が可哀そうじゃない、、、私だったら、、、

ふと、自分の部屋着が気になった。学生の頃から着ているヨレヨレのスウェット。何色だったか怪しい色になっている。週末はテンションの上がる部屋着を買ってこよう。そしたらこの時間がもっと楽しくなるわ。

ふとテレビ台を置く予定のスペースに目をやり、「ま、そのうちね」とハナはつぶやいた。


解説

2020年、映画館をそのまま小さくしたようなスマホスタンド”マイシアタースタンド”が大ブームになる。個人で作っていたこのスタンドをインスタで紹介したことがきっかけで今や世界的なブームになりつつある。「映画館」が人気で、一番の不人気は「会議室」だという。

音楽業界が目をつけ、アーティストとコラボした”マイシアタースタンド”を作成し、ライブ限定グッズとして販売。ライブの雰囲気を思い出せる、と熱烈なファンに人気のようだ。




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