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陰キャラの人生初デート 〜高3の浴衣祭り〜

高3の6月。

部活を引退し、受験ムードが漂い始めた頃だ。

同じハンドボール部の同期だったイケメンのFに声をかけられる。

F「マネージャーに浴衣祭りにそうたと一緒に行きたいって誘ってたで」

僕「え?うそやろ?」

嘘に決まってる。

何しろ自分は誰とも付き合ったこともなく、
女友達すらいない。
女の子と面と向かって話すことができない人間だ。

部活でも同期で唯一の補欠。
部活中は初歩的な所で怒られてばかりで途中呆れられていたレベル。

顔もよくないし勉強もスポーツもできない。

なんの取り柄もない僕が、
かわいい後輩のマネージャーにどういう展開でデートに誘われるというのだ。

絶対にドッキリに決まっている。

驚いてる自分を見てFは続ける。

F「彼氏のYと別れたらしいから今フリーみたいや。なんかようわからんけどお前と行きたい言うてたで」

Yというのはマネージャーの同い年のハンド部員であり、自分にとっては一つ下の仲の良い後輩だ。

別れてるならなおさらFとかに行くべきだろう。
いやFは彼女がいるから無理か。

マネージャーの同い年の誰かを誘えばいいんじゃないかと思ったが、
同い年は友達としか見てないから誘わなかったのか?

彼女にとって僕の代の中から選ぶとしたら
F以外で親しく話してる人はいない。
後輩と仲良くしてた僕が1番話してることになる。

あ、消去法か。

消去法と思った瞬間なぜか妙に納得がいった。

ぐるぐる考えてるうちにFが話を続ける。

F「ようわからんけどとりあえず行ったらええやん。
もしかしたらなんかあるかもなw
浴衣祭りやから浴衣もかわいいやろし」


浴衣。。。
いや絶対かわいいやろ。
期待が膨らむ。

ドッキリでもなんでもいいから
こんなチャンス滅多にない。

F経由でのデートの提案に、自分は首を縦に振った。


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マネージャーとガラケーのメールで日程調整などのやり取りをする。

同じ部活という理由でアドレスは知っていたが、まともに連絡するのははじめてだ。

そもそも女の子とメールをやり取りをしている事自体がはじめてだ。

なんだこの展開の早さは。

何度も不安がよぎる。
家に帰った後、
頬がよく赤くなっていたのは
恥ずかしい気持ちになってたのではなく、

恐らく我に返るために頬を叩きすぎていたのだろう。


記念すべき初デートスポットは姫路の浴衣祭り。

毎年6月に数万人規模で行われる
兵庫県姫路市きっての一大イベントだ。

姫路はガラの悪いヤンキーが多いの街でも有名。
浴衣祭りの際には
やたらと暴走族やヤンキーが溢れ出す。


マネージャーがもしちょっかい出されたとしたら絶対に守ってやる!
とガリガリの体で逃げ腰になりながら決心した。


デート当日。
地元の駅で待ち合わせる。

数分遅れるとのことで駅前にて待っていた。

僕は勝負服なるものを何も持っておらず、オシャレの「オ」の字も知らない。
地元の激安アウトレットショップでなけなしの金で必死に集めた服を着てきた。

赤と黄のボーダータンクトップ。
白のベロア?生地の半袖パーカー。
そして白の半ハーフパンツ。
腕にミサンガをつけ、首にプラスチック製のの数珠っぽいネックレス。

つまり上下白に、インナーがガッツリ原色。

今思えば、
気合い入れてる感満載で痛々しさがあったことだろう。


全身白にまみれた服装で待っていると、
マネージャーも待ち合わせ場所に到着する。


マネージャーの浴衣姿。

とてつもなくキレイだった。



青春の恋愛映画なら、
確実に「キュン」という効果音が出ていたことだろう。

僕は完全に惚れていた。


デート僕は終始緊張していて、何を話せばいいかわからずにいたのだが、
さすがは部活を裏で支えていたマネージャー。

色んな話題を出したり質問してくれたりして
会話が盛り上がるようにしてくれた。

本来はこっちが盛り上げないといけないのになぁと罪悪感を持つ。
罪悪感を持ったところで盛り上げられるコミュ力は持ち合わせていなかったのだが。


祭全体を一通り回ったり。
出店の焼きそばを一緒に食べたり。

楽しい時間はすぐに過ぎていく。

惚れた勢いのままに、
今日どうにか告白できないかと息巻いていた。
が、告白したこともないしそもそも人に自分が思っていることをつたえることすらできない自分。
告白以前の問題だった。


そうこうしてる間に、
浴衣祭りは終了。

電車に乗って最寄り駅まで戻る。

最寄り駅にて自転車を停めていたので駐輪場まで一緒に戻る。

マネージャーもお父さんに迎えの電話を呼んでいたので一緒にいれるのもあと少しだ。

自分の気持ちを伝えられるのもあとわずか。

なんて伝えればいい?
どういう流れで伝えればいい?

頭で考えてるうちに、駐輪場に着く。

マネージャー「今日はめちゃくちゃ楽しかったです♪」

彼女の性格的に相手のことを思ってリップサービスで言える気前のよさを持ってるだろうから
僕のために言ったんだろうな
と勝手に思い込む。

そう思ってる内に
女性は褒めたほうがモテる
とテレビかなんかで観たことを思い出す。

そうだ。
褒めればいい!
最後に何か褒めよう!!


そう決心し、
つぐんでいた口を開く。


僕「そそ、それはま、まねーじゃーのええがおがかかかわいかったからちゃうかなっ」


褒めることばかりに気が行き過ぎて会話が成り立ってない返しをしてしまう。


だが言えた。


これでマネージャーもキュンとしてくれるんじゃないか期待を抱いて
彼女の反応を見る。


マネージャー「えー先輩おもしろーいww」



ん?おもしろい?

褒めただけやのにおもしろい?

何対してだ?

どういうことだ?


頭が混乱した。

鏡で見てないが、その時の自分の顔はおしろいを塗ったような蒼白さだったと思う。


あ、自分は異性としてなにも見られてなかったというのか。


いやそりゃそうだ。

自分ごときがこんなかわいい子と付き合えるわけがない。

驕りだ。

自分は別に異性としてみられてたわけじゃない。
彼氏と別れて自由になったから誘いやすい人をただ誘っただけなのだろう。


聴いてもないのに自分で勝手に納得できる解釈を見つけ出す。

マネージャー「お父さん駅に着いたみたいなんで帰りますね!今日は楽しかったです!ありがとうございました!」

そう笑顔で言って、遠くにある車の方に消えていった。



なんのよどみもないその笑顔が、
逆に虚しい気持ちにさせる。


解散した後40分くらいかけて自転車で家に帰るわけだが、
どう帰ったかは覚えていない。


半年近く経ってから、
後輩のYとヨリを戻したと聞いた。


そりゃそうか、と思った。



今となって言えるのは、
恥ずかしい経験を高校生のうちにできてよかったと強く思う。




つづく


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【当noteの発信内容】

当noteは、

占い師からただのフリーターになった何者でもない32歳の男が、

自分史を通じて

自身の人生のミッション(役割)を見つけだすことで、

自分探しの旅を終わらせるまでの軌跡をつづっていく。

人気占い師から、ただのフリーターになった男の話

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