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「クリエイターワンダーランド」が示唆する5つの重要エンタメテーマ

少し遅くなりましたが、ようやく業界をざわつかせている中山さんの「クリエイターワンダーランド」を読み終わったので自分の考えの整理も含めて少し綴ろうと思います。

あまりネタバレするのもあれなんで、あくまでも自分が普段から意識しているテーマ群と本書が触れている内容を関連させて次のディスカッションのきっかけづくりが出来ればと思います(あくまでも公開情報ベースにディープな内容はいろんな意味で基本オープンな場で触れないようにしてます笑)

ちなみに本作の前の「オタク経済圏創世記」も「推しエコノミー」も体系的にエンタメ業界の地殻変動を理解できる良著ですので興味ある方はお勧めです。

黄色ハイライト著書。ちなみにエンタメビジネス全史も中山さんの著書になります。
※Kindle進捗率は読んでないわけではなく読み直しあるいは検索だと思うので悪しからず笑

本noteでは個人的に意識しているテーマのうち、特に再考させられた下記5つのテーマについて軽く触れたいと思います。


アップロードカルチャーと二次創作

 あくまでも主観ですが、私自身このエンタメ業界の変遷を考えるときは①プラットフォームと技術、②クリエイターとプロダクション、③消費者という整理をすると分かりやすいと思ってます。これら3主体それぞれの変化と主体間の関係性を整理するといろいろな変化が見えてきますし、次の変化を考える上でとてもわかりやすいと思ってます。

ここ20年プラットフォーム・クリエイター・消費者の変化を一言でまとめますと、プラットフォーム・クリエイター・消費者の境界線が限りなく曖昧になったと思ってます。これまでプラットフォームが主にマスメディアという形で絶対的な力を持ち彼らがコンテンツを選別し能動的に発信していき、消費者が画一化されたコンテンツを受動的に享受するという構図でした。それがYouTubeを筆頭に様々なツールやサービスに支えられてクリエイターの裾野が広がりコンテンツが分散化、さらにはライブ配信やX上の拡散によって消費者自身も1人のクリエイターとして元の作品を二次作品として拡散する重要な役割を担っています。本書ではこのアップロードカルチャーと二次創作について具体例交えて掘り下げてますが、個人的には今のコンテンツの在り方をミクロレベルで理解するにあたっては最も重要なコンセプトだと思ってますので改めてハイライトさせていただきます。


IPメディアミックスにおけるリアルの重要性

こちらのテーマに関しては感想に近い形になってしまうのですが、とにかくIPメディアミックスにおけるリアルの重要性をここまで掘り下げているものはなく、(自分が局所的にしか関わっていない分)1番読み応えがある部分でした。

もちろん一連のコロナショックがあって人々は余儀なくオンライン移行させられることによってオンラインサービスが爆発的に普及し、その一方でリアルにはリアルビジネスならではの良さがありその結果リアルビジネス回帰していることは理解しています。本書で特に勉強になったのはそのリアルビジネスがなぜ消費者にとって重要なのか?という心理的解像度の深さ及び同じリアルビジネスといってもただリアル=イベントではなく、その組み合わせの数およびメディアミックスにおける拡張性でした。

前者についてはキーワードは月並みですが、エンゲージメントからみたリアルの重要性、またアーカイブのデジタルコンテンツが溢れる世の中における一瞬、その場限りの体験の持つ重要性。後者については聖地巡礼、テーマパーク、テーマカフェ、舞台、物販の導線としてのゲームセンター、コンビニ1番くじといった事例で示されるように拡張性及びそれらが他のメディアミックスや収益源とどう絡んでいくのかという着眼点でした。

特にIPビジネスのメディアミックスという意味ではデジタルに限らず、そのIPの特性に応じていかにデジタル・リアルを多面的にかつ複層的に活用できるかがカギと改めて気づかされました。

クリエイターエコノミーという幻想

ここは個人的にキャリアとしてもずっと向き合ってきたテーマでもありますので、あえて深堀りはこういった場では避けますがクリエイターエコノミーの歴史・問題について知りたいのであれば本書は必読です。

この業界で働く人間であれば誰しもが直面する”ロングテールビジネス”。本書ではマルサスの罠という形で触れられてますが、限られた人々の可処分時間を、拡大し続けるクリエイター層が取り合うと必然と優劣が生まれる。別の確度からパレートの法則という有名な経済理論がありますが、まさしく"Top20%の顧客がTop80%の収益を稼ぎ出している"というこの理論はクリエイターエコノミー領域のビジネスにも例外なく当てはまることが多く、ここをどうバランスして事業者・クリエイターさん・消費者の3者をハッピーにするかがこの領域における経営者の腕の見せ所だと思います。

エンタメにおけるweb3.0の現在地

本書ではそれほど深く言及されてはいませんが、今後この業界を考えるにあたって避けては通れないテーマだと思うので、一応私の方で軽く触れておきます。

エンタメ業界におけるweb3.0が盛り上がったのはちょうど私が事業サイドにいた2020年後半から2021年にかけてでした。この頃はけっこうコンテンツ領域ですと1メディアミックスとしてのNFT、少し時間が経つとマーケットプレイスやイベントなどと連動したユーティリティNFTなどが流行った印象です。一方で、諸説あるかと思いますが個人的には『結局それNFTである必要あるんだっけ?今のサービスの延長じゃダメなの?』という本源的な価値が特に消費者サイドに理解されず、多くのプレイヤーがまずは消費者をターゲットとする直接的なB2Cビジネスからまずは事業者をターゲットとするB2B2Cに切り替えた記憶があります。

エンタメ x web3.0ビジネスの最前線に今はいないので、今は消費者・事業者心理がどのようになっているかわかりませんが、肌感としてはweb3.0という明確な言い方はしていなくとも、web3.0の本質である分散・所有・共創といった根本的な思想を踏襲したサービスは2022年の冬を乗り越えて市場を創出し続けているような気がしてます。また個人的には昨今の生成AIの普及はさらに我々の人としてのアイデンティティに問いを投げかけるものとなり、このweb3.0関連のビジネスはこれまでにない成長の波を経験するのではないかと思っております。

反逆者としてのエンタメの位置づけ

これは何か深い考察があるわけではなく、本書の序章で触れられている部分で個人的にエンタメの真髄に触れていると思って思わずハイライトさせていただきました。考えてみたら自分が小さかった時も徹夜で64のスマブラで遊ぶのは勉強してトップ大学を目指すエリートからすると"悪"だったし、絵を描くことは将来のキャリア設計においてはあくまでも"趣味"の範疇だったと教育されてきました。

ただ社会に出てみたらどうでしょう。少なくとも自分は未だにこうした時間は一切無駄だったとは思っていないですし、むしろもっと追求すれば良かったと思うことさえあります。逆にエンタメを愛しエンタメを追求し続けてきたクリエイターさんやアーティストさんに会うとよっぽど毎日空虚に生きているサラリーマンよりも確固たる想いや哲学を持っていて敬意を払うことも多々あります(もちろんサラリーマンが悪いと言っているわけでは決してありません笑)。別にどんな道に進もうと確固たる自分の信念をもって追求している人は素敵だなぁと。それが現在技術の発達によって全ての人が何者にでもなれる今の時代は最高に面白い時代だと思いますし、それこそが社会的反逆者とされてきたエンタメ従事者たちが水面下で起こしてきた真の社会革命なのではないかと密かに思ってます。

最後まで読んでいただいた方はありがとうございました。最後少し個人的な想いがにじみ出てしまいましたがこんな感じで好きなエンタメとファイナンスについて1人1人悶々と日々考えながらたまに綴ってます。興味ある方は是非Twitter/noteフォローしていただければと思います。

それでは今週も頑張っていきましょう〜

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