見出し画像

「マクドナルドのコーヒーで火傷した」訴訟の真相 『手ごわい頭脳 アメリカン弁護士の思考法』

アメリカで、ある女性がマクドナルドのコーヒーが熱くて火傷したと訴え、約300万ドルの損害賠償金を受け取ったという話、多くの人が聞いたことあるのではなかろうか。そして失笑、なんてバカげた国なんだと思わなかっただろうか。

私もずっとこの話をそのまま信じきって、アメリカというのは訴えたもの勝ちのトンデモない国だと思っていたのだが、真相は少し違うようだ。

アメリカ人弁護士のコリン・ジョーンズによると、裁判に至るポイントは3つあった。

1.マクドナルドが、コーヒーを買ってすぐには飲めないほどの高温にしていたのは意図的であった。高温で保存するほうが香りが良く、客に「上質のコーヒーだ」と印象付けるためである。

2.この訴訟が起きるまでの10年間に、マクドナルドはすでに火傷を含むクレームを数百件うけており、それまでに数十万ドルの和解金を支払っていたが、それでもコーヒーの温度を変えようとはしなかった。

3.原告女性の火傷は、1週間の入院と3週間の休職を要するほど重かった。当初は裁判などするつもりはなく、マクドナルドに実質の損害賠償を要求しただけだったが、マクドナルドから一蹴された。

さらに、裁判で陪審員に不評だったのがマクドナルド側証人の主張である。曰く、

「年間で数億杯のコーヒーを販売しているマクドナルドにとって、10年間で数百件の火傷事件は、統計学上まったく意味のない数である」

確かにそれはそうかもしれないけれど、そういう言いかたが反感を買うのは当然だ。こうして「マクドナルドのコーヒーで火傷した女性が300万ドルという賠償金を勝ち取った」というニュースが日本に伝わってきたわけだが、実はまだ続きがあった。火傷した女性にも過失があることが認められ、最終的には日本円で5000万円程度にまで減額されたそうだ(それでも充分すごいけれど)。

これは本書で紹介してあったエピソードの一つ。

最後に、アメリカ法曹界の格言。

依頼された案件の事実関係が不利なら、法を主張せよ。
法において立場が不利なら、事実を主張せよ。
法も事実も負けそうな場合は、相手の弁護士をひたすら罵倒せよ。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?