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浜田敬子さんが選ぶ「次世代に伝えたい5冊」

 第1回「bookwill 小さな読書会」(2023年3月10日開催)では、ゲストキュレーターの浜田敬子さんによる「次世代に伝えたい5冊」の厳選タイトルも紹介されました。推薦コメントと共に、ここにシェアします。本でつながるシスターフッドを、あなたへ。
(本の実物は、蔵前のブックアトリエ「bookwill」の本棚にも並べています)

<読書会のレポートはこちらから>
https://note.com/bookwill_kuramae/n/ne4e9ff35d74d

 

『紀ノ川』(有吉佐和子著、新潮文庫)


 時代背景と織り交ぜて紡がれる「女たちの物語」が好きで、有吉作品は中学生くらいからよく読んでいました。この作品は、紀州和歌山の名家で、明治・大正・昭和の時代を継いだ三代の女性たちの系譜。時代と共に変わる、女性の生き方のダイナミズムは圧巻です。 

『対岸の彼女』(角田光代著、文春文庫)

   角田光代さんは、立場の違いによって分断しがちな女性の生き苦しさや、それを乗り越えるシスターフッドを、鮮やかに描く物語の名手。私と同い年の1966年生まれの作家さんなので、どの作品を読んでも同じ時代感覚を感じられます。『八日目の蝉』も大好きな作品です。 

 『マイ・ストーリー』(ミシェル・オバマ著、集英社)


 実在の女性の評伝もよく読みます。Netflixで視聴できる同タイトルのドキュメンタリーもおすすめです。私たちは日本でジェンダー不平等に直面していますが、アメリカではさらにこれに人種の問題が加わります。
 オバマ大統領の妻として知られるミシェルさんの人生は、この二重の差別の歴史そのものです。彼女は持ち前の未来を決して悲観しない明るさと、努力で道を切り開いてきた。その半生を読むと、いろんなことがあっても、まだまだ頑張ろうと思えます。
 大統領夫人時代の、ホワイトハウスの話も、すごく面白いです。アメリカの大統領というのが、どれだけ権力の頂点にいるのかがよくわかります。 

『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(林真理子著、角川文庫)


 私のキャリアが今あるのは、林真理子さんや篠山紀信さんなど、日本を代表するプロフェッショナルな方達の編集者を若い時に経験したことが大きいです。朝日新聞の地方支局を経て、『週刊朝日』に配属されて事件や政治を追っていた頃、「林真理子さんの対談連載を始める。誰か担当をやりたい人は?」という上司の声に真っ先に手を挙げました。
 というのも、私が高校生の頃、林さんの『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が一大ブームに。クラス中の女子で回し読みをした思い出があったのです。当時、女性が自分の私生活をここまで赤裸々に語るエッセイはなく、斬新で面白くて夢中になって読んだことを覚えています。何より、女性がこれだけ自分の気持ちを、野心を隠さず言っていいんだということが驚きでもありました。
 林さんの連載担当として、そのプロフェッショナルな仕事を間近で見られたことは、私の仕事観を根底から変え、「仕事って面白い」と視界が開くきっかけになりました。 


『らんたん』(柚木麻子著、小学館)


 最近読んだ中でも胸熱!な小説がこれ。恵泉女学園を創設した河井道と一色ゆりのシスターフッドを軸に、日本の女子教育の礎を築いた女性たちが繰り広げる群像劇。私たちが教科書で学んでこなかった“B面の歴史”――女性側から見た歴史の記録が詰まっています。日本の女子教育の祖・津田梅子や『赤毛のアン』翻訳で知られる村岡花子など、近現代に名を残す女性たちがオールスターキャストで登場して、読み応えがあります。混沌の時代に道を切り拓いた先輩方の奮闘に触れ、「ここからつながりの中に私たちも存在しているのだな」と勇気をもらえます。

『海をあげる』(上間陽子著、筑摩書房)


 「ああ、この人の文章が好きだな」と心から思える書き手の一人が上間陽子さんです。美しい言葉で紡がれるのは、戦争の悲劇から連なる暴力や貧困の中に生きる女性たちの姿。沖縄で子どもを育てるとはどういうことなのか、胸に迫ります。 
 現在、上間さんは10代で妊娠・出産する女性たちを支援するシェルターも運営。今後も注目したい書き手です。 

 浜田敬子さん、ありがとうございました!


まとめ/宮本恵理子