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『Live My Life 自分らしく働くための39のヒント』~bookwill「小さな読書会」第7回レポート ゲストキュレーター:田中美和さん(Waris共同代表)~

 新旧のカルチャーが交差する街・蔵前を拠点に生まれたブックアトリエ「bookwill」では、多様な世代の女性たちが安心して参加できる招待制の対話型読書会を企画しています。

 2024年1月18日(木)の夜に開催された第7回読書会は、女性の多様なキャリアを応援するWaris共同代表の田中美和さんをゲストキュレーターに招いて。田中さんの最新刊『Live My Life 自分らしく働くための39のヒント』(KADOKAWA)をテキストとしてめくりながら、和やかな空気の中で対話が始まりました。

◆bookwill 小さな読書会◆

 10代の中高生、キャリアを重ねたマネジャーやリーダー、研究者など、多様で他世代な女性たちが集まる読書会。7〜10人で一つのテーブルを囲み、肩書きや立場を置いてフラットに対話を楽しむ形式です。参加者は事前にゲストキュレーター指定の「テキスト」を読んだ上で参加し、感想をシェア。本をきっかけに対話を重ねていきます。

<第7回「bookwill 小さな読書会」開催概要>
2024年1月18日(木)
ゲストキュレーター:田中美和さん(Waris共同代表)
テキスト:『Live My Life 自分らしく働くための39のヒント』(KADOKAWA)

はじめに、bookwill管理人の小安美和よりご挨拶と読書会の約束をご説明

 今回の読書会に集まったのは、『自分らしく働くための39のヒント』を企画した編集者の長田和歌子さん、公務員のBさん、外資系エンジニアのTさん、メディアなどでパラレルキャリアを築きながら活躍するSさん。そして、夫の海外赴任に伴う専業主婦生活を経て、百貨店でパートとして再就職し、ショップ店長として多忙な日々を送った後、なんと「還暦でフリーランスデビュー(!)」を果たしたRさん。

 年齢や業種も幅広く、一つの会社で長く勤め続けている人もいれば複業やフリーランスで強みを発揮している人もいる、「女性のキャリアの多様性」の縮図とも言えるような多彩なメンバーが、一枚板の天然木テーブルを囲みます。
 初対面ながら、あっという間に意気投合できる理由は、きっと “場”の力があるから。「シスターフッド」をテーマに集めた本に囲まれたブックアトリエ「bookwill」には、頑張る女性をふわり包み込む空気が満ちています。

 参加者が持ち込んだテキスト(課題図書)には、たくさんの付箋が。「感激です」と目を細めながら、美和さんは執筆の動機について語ってくれました。

「私は11年前に女性3人でWarisという会社を立ち上げ、自分らしいキャリアを実現したい女性たちと企業をつなげる事業を広げてきました。同時に注力してきた一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の理事としての活動も、ワークスタイルの多様性を促進したいという思いからです。さらに遡ると、前職は雑誌記者でして、新卒で配属された『日経WOMAN』という雑誌で働く女性を対象に取材を重ねた経験から、『女性のキャリアの選択肢は多様で、唯一の正解はない。その人、その時にとってベストな選択肢を柔軟に見つければいいんだ』という確信に至ったんです。ところが、社会を見渡すと、『こうでなければ』という思い込みから苦しんでいる女性は少なくない実態も分かって。キャリアにもいろんなスタイルがあることを、一人でも多くの女性に知っていただきたいという思いから、具体的な実例も交えて書きました」

 自身も経営者の傍ら、執筆業も続け、1児を育てるワーキングマザーでもある美和さん。キャリア理論家のマーク・サビカス博士の「キャリアにアップもダウンもない」という言葉が大好きなのだそう。 

 今回の出版を提案した編集者の和歌子さんもまた、美和さんのメッセージに励まされた女性の1人。出産を機に待機児童問題にも直面し「モヤモヤを抱えていた」という和歌子さんは、ウェブメディアの取材で美和さんに初対面。「そのときに伺った『どんな働き方でもいいから、好きな仕事は辞めずに続けることが大事』という言葉が胸に響いた」のだそう。

 

 「特定の就業形態だけに偏らず、どんな女性でも参考になる本を目指した」という美和さんと和歌子さんのこだわりは、確かに読む人それぞれに届いたようです。誰からというわけでもなく、「私の“推し文”」を口にする感想が続きました。

  例えば、30代の公務員、Bさんの“推し文”は「冷蔵庫の中身」についてのメッセージ。

「私は45ページの『冷蔵庫が空っぽだと料理のプロでも何もつくれない。「冷蔵庫の中身」を増やすためにまずはいろいろやってみよう!』という文がストンと来ました。評価や待遇が男女対等の環境を選んで、子どもも2人産んで頑張ってはいるけれど、この先すぐに新しい環境へ飛び込めるかというと難しいなと考えていたところだったんです。そうか、将来どんな道につながるかは分からないけれど、まずはいろんな経験を貯めていけばいいんだと、心が軽くなりました」

  Bさんの話を頷きながら聞いていたTさんも、1社で長くキャリアを積んできた30代。「激務でもあるエンジニアの仕事をこの先も続けていけるかは自信がない。かといって、『これを目指したい』というWILLもまだ見つからないし、自分の強みも分からない」という不安に押し潰れそうになるときもあるのだと告白してくれました。

「でも、この本を読んで『今の自分を無理に変えようとしなくていい』『目標がすぐに見つからなくても大丈夫』と励ましてもらえる気がしました」

 この言葉に、編集の和歌子さんもうれしそうな表情。「美和さんは『会社員を続けながらできること』もしっかりと伝えてくださったんです。184ページ以降にまとまっていますので、ぜひ読んでいただきたい部分です」

「還暦のフリーランスデビュー」を果たしたRさんにとっての“推し文”は、44ページの「『言霊(ことだま)』という言葉がある通り、私たちは使う言葉によってプラスの影響を受けることもあれば、マイナスの影響を受けてしまうこともあります」という一文。

 12年間の海外での専業主婦生活から帰国後、たまたま募集広告を見つけてパートから入った百貨店で、気づけばショップの店長に。しかし、体力的にもハードだったことから、結婚前の20代で身につけたデザインの仕事に立ち返ろうと、大きな一歩を踏み出したばかりのRさん。
 まさに言霊の力を信じて、自分への約束事として決めたという「ポジティブな言葉を積極的に使っていこう」「簡単には傷つかない」という二つの誓いには、共感の声が集まりました。

 ここからは、著者の美和さんへのお悩み相談へ。Tさんが打ち明けてくれた「自分の強みが見つからない」悩みに対しては、どう向き合うといいのでしょうか。美和さんがお勧めするのは「越境体験」です。

自分にとっては身についていて当たり前だと思っているスキルが、一歩外の環境に出ると重宝されて、強み発見につながることはよくあります。私自身も20代後半で激務で自分を見失いそうになった頃に、チャリティマラソンを主催する団体にボランティアとして参加してみたところ、『文章が上手だね!』と褒められて、発信活動のサポートに関わることになったんです。出版社ではうまくて当然と見なされていた文章力が、外ではこれほどありがたがられるのかと驚くのと同時に、自分が役に立つスキルが明確になって視界が明るくなりました。そしてマラソンのサポートを通じて、『人を応援する喜び』を知った経験が、女性のキャリア支援という私の活動の起点になっているんです」

美和さんの実体験を聞いたTさんも「心が動いた経験を大事にしたらいいんですね」と笑顔に。「私も仕事でインドに行かせてもらったときに、すごくワクワクした感覚を覚えていて。またインドに行きたくなりました」。

 一方で、Sさんが抱えているのは「WILLは明確なのに、転職活動がうまくいかない」という悩み。

 不妊治療による離職経験もあるというSさんは、人材や雇用・キャリアに関する社会課題を軸に、新しいステージを模索中。チームをつくって実現してみたいアイディアは溢れるものの、温度感がフィットする企業にはまだ出会えていないのだそう。

 この悩みに対して美和さんは「個人の強みを引き出す働き方については、まだ企業側も模索中で過渡期。会社員というスタイルにこだわらなければ、選択肢は広がるのでは」とアドバイス。
 また、普段の会話の中でもWILLを表現し続けることで、仲間を紹介してもらえたりと、チャンスは広がるのだそう。「私が起業仲間を見つけたきっかけも、『美和ちゃんと同じことを言っている友人がいるよ』と紹介してもらった縁だったんですよ」

 本の内容からさらに踏み込んだ著者の体験談もたっぷりと聞けた夜。参加した皆さんの顔も、ほかほかと緩やかに。

 「読んでくださった皆さんから直接ご感想を聞けて、胸がいっぱいです。私にとって書くことは、コミュニケーション。多様なキャリアを歩んでいらっしゃる皆さんと深い対話ができて、『書いてよかった』と心から思えました」と美和さん。

  小さな読書会「bookwill」では、これからも1冊の本を通じて女性たちがやさしくつながる対話の時間をつくっていきます。次回のレポートもどうぞお楽しみに。

 まとめ/宮本恵理子

 


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