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読者のこころを映す「堀の中の美容室」

売上は1冊でした。その1冊の本が100円出なかったことがせめてもの救いです。マスクが解禁となった今週から売上は急降下を続けていました。そこに急に戻った寒さと雨。古本屋は壊滅的なダメージを受けています。この状況はきっと当店だけではないでしょう。

とはいえ、嘆いていてもしょうがない。読書とブログだけは毎日欠かさず続けます。今日は「堀の中の美容室」というマンガ作品を紹介したいと思います。

本作の舞台は女子刑務所内にある一般客が通える美容室。そこで重い刑を受けた受刑者が美容師としてハサミを持ち一般客の髪を切る。最初はその設定に誰もが違和感を感じたと思います。

第1話では仕事に忙殺される女性記者さんが
第2話では看守さんが
第3話では独り暮らしのおばあちゃんが
最終話ではお姉さんが

しかし、読者の違和感を登場人物の会話がほぐしていきます。本作では驚くような描写は何もなく、ただただ淡々と話が進みます。ストーリーと絵の雰囲気がとてもよくマッチしており、控えめにいっても少し重い題材にも関わらずとても落ち着いて読めました。

本作のテーマは「井の中の蛙大海を知らず」という俳句にかけた更生のストーリーですが、店主としては主人公が刑務所内で美容師となることを選び、更に自分の髪を伸ばし続けることに込めた思いを感じました。

主人公の美容師は自分の髪を伸ばし続けた。
それは自分が犯した罪を忘れないため。
そして、人の髪を切ることを選んだ。
それは自分の目を前に向けるため。
しかし彼女に髪を切ってもらったお客さんたちそれぞれにも変化がおきる。

ラストシーンはふたりの少女のお客さんを前にハッピーエンド風に終わりましたが、店主が受けた余韻はそれとは少し違っていました。自分の中にあった心のわだかまりがこの作品に反響してしまったからです。この作品はとてもシンプルです。ゆえに、読む方に寄って読書後の印象は違うもしれません。

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