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宗教的な短編名作小説集「幸福な王子」

昨日は繁盛した古本屋ですが、今日はお客さんが2人だけでした。終わってますね。完全に。

おかげで仕事に集中できましたが、逆に仕事に集中しすぎて読書の時間が足りなくなりました。そこで、今日は短編集「幸福な王子」の5作品だけ読みました。短編集は時間がない時でも読めるので個人的には好みです。ただし、素晴らしい作品に限りますが。

そして表題となる短編「幸福な王子」は期待通りの作品でした。童話でした。面白かった。読み終わった瞬間に、店主は「なんだこの作品は!」という驚きの声を心の中であげました。王子と燕と間で交わされる善の行いがラストシーンで無残となる。なんとも悲しい話です。しかし、これが記憶に残る物語に昇華する。これぞ短編!という見事な作品でした。

そして2作目の「小夜啼き鳥と薔薇」を読み終わったときも、ほぼほぼ同じリアクション。いや、この2作目はもっと毒がまわったような気がします。赤い薔薇を求める主人公、そしてそれに応えるために自分の心臓を薔薇に突き刺し歌う小鳥。そんな薔薇を見向きもせず、ラストシーンで主人公を足蹴にする令嬢、そして煽りをくって主人公に捨てられた薔薇。薔薇に命を捧げた小鳥のことを考えると、心が痛みます。

そして店主的には一番好きなのが3作目の「身勝手な大男」。大男の庭で遊ぶ子供たちが季節を変えるという話です。この世界観が本当に素晴らしいと思いました。シンプルなアイディアで見事に独特の世界観を作り出しています。まさにシンプル・イズ・ベスト。誰にでも書けそうだけど、そう簡単には書けますまい。

4作目の忠実な友も直球勝負で面白かった。心に響く内容です。これだけの小話を連打で書けるということが本当に素晴らしい。天才ですね。

そして最後の「非凡なる打ち上げ花火」は花火の擬人化とも思える奇妙な作品です。1854年生まれのオスカー・ワイルドがここまで擬人化を見事に書いていることを考えたら、日本のアニメ文化はアイルランド辺から来たのではないかと妄想を働かせてしまします。

で、最後に総括して考えると、どの作品からも神秘的な部分を感じました。超越的な道徳心も感じました。また、哲学的に考えると、「贈与」が行われることに気がつきます。ゆえに、ただ単に物語として面白いだけでなく、宗教的、哲学的に面白い。だからこそ名著と呼ばれ、現代に残る作品なのでしょう。

日本でオスカー・ワイルドと言えば名前は有名だけど、学生時代に授業でやった以来読んでない、肝心の作品を読んだんことがない、そんな方は少なくないはずです。なにせ店主も同じでしたから。なので、もし今日はなにを読もうかなーと迷ったら、ぜひ本作をおススメします。「イワンのばか」を面白いと思った方であれば、絶対に気に入るはず。

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