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レティシア書房店長日誌

花田菜々子「モヤ対談」

  著者の花田菜々子さんは同業者です。多くの書店を渡り歩き、2022年高円寺に書店「蟹ブックス」を開店。「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に会いそうな本をすすめまくった1年間のこと」という、滅茶苦茶に面白い本も出されています。
 そして、様々なジャンルの人たちと、恋愛、家族、育児、ジェンダー、社会、他者との関わり等のシビアな問題を語り尽くしたのが本書です。(新刊1870円)です。メンツがすごいです!
 

 岸政彦(社会学者)、ブレイディみかこ(コラムニスト)、山崎ナオコーラ(作家)、西加奈子(作家)、植本一子(写真家)、ジェーン・スー(コラムニスト)、ヨシタケシンスケ(絵本作家)、宇多丸(ラッパー)、田房永子(漫画家)等々20名です。
 最初に、ヨシタケシンスケが子育てについて、「子供の寝顔を見ると疲れが全部吹き飛ぶって聞いてたけど、全然吹き飛ばないじゃないか!って、自分で子育てを経験してみてわかったので。」と、笑える発言で父の立場から育児について語ります。
 さすがだな、と思ったのはブレイディみかことの対話でした。今の日本を覆い尽くす「ことなかれ主義」について、花田は「大多数の人たちの『なんとなく言わない方がいいみたい』とか、『過激っぽくなってしまうから』『クレームが入るかもしれないから』っていうことの、その腐敗の根深さはすごく感じています。まあそれが今の日本の抑え込み教育の”成果”なんでしょうけどね。」
 それに対して、ブレイディみかこは、「就活の時期になったら毎年話題になりますけど、やっぱり就職活動するときのあの女子のスーツ姿とか異常ですよね。 あれももしかしたら、絶対にそうしないといけませんっていう規則があるわけじゃなくて、面倒くさいから?」と、ここから刺激的な対話が深まっていきます。
 文学者荒井裕樹との「マイノリティーと人権」の対談の中、荒井の「まとまらない言葉を生きる」を読んで、花田がこう言います。
 「『言葉が降り積もる』と、本の中でも書かれていましたね。わかる気がします。荒井さんのように、いい言葉も悪い言葉も、この世界に降り積もっていくものだとして、ヘイトや差別の言葉、人を苦しめる言葉に対抗するためには、と考えたとき、私は運動会の玉入れ競争が思い浮かんだんです。敵チームがカゴに入れた玉の数より多く、こちらが魂のある言葉を世に送り出し続けるしかないんじゃないかな、と。」いいこと言うなあと思いました。
 と、こんな風に紹介してゆくとエンドレスになってしまいそうなので、ここまでにしますが、今を生きる私たちにとって、考えていかねばならないことを、20名のゲストがそれぞれの言葉で語ってくれるとても刺激的な一冊でした。毎日、一人づつ読んでいきましたが、今日はどんな発言が出るのかとワクワクしながら読みきりました。

休業のお知らせ 7月1日(月)〜5日(金)までお休みいたします。

●レティシア書房ギャラリー案内
6/19(水)〜6/30(日)書籍「草花の便り」出版記念原画展 西山裕子
7/10(水)〜7/21(日)切り絵展「図鑑と地図」 後藤郁子作品展
7/24(水)〜8/4(日)「夏の本たち」croixille &レティシア 書房の古本市

⭐️入荷ご案内
Kai「Kaiのチャクラケアブック」(8800円)早乙女ぐりこ「速く、ぐりこ!もっと速く!」(1980円)
つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)
山本英子「キミは文学を知らない」(2200円)
たやさないvol.4「恥ずかしげもなく、野心を語る」(1100円)
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
夏森かぶと「本と抵抗」(660円)
加藤和彦「あの素晴らしい日々」(3300円)
Troublemakers (3600円)
若林理砂「謎の症状」(1980円)
宇田智子「すこし広くなった」(1980円)
おぼけん「新百姓宣言」(1100円)
仕事文脈vol.24「反戦と仕事」(1100円)
降矢聰+吉田夏生編「ウィメンズ・ムービー・ブレックファスト
(2530円)
「些末事研究vol.9-結婚とは何だろうか」(700円)
今日マチ子「きみのまち」(2200円)
秋峰善「夏葉社日記」(1650円)
「B面の歌を聴け」(990円)
「本と本屋とわたしの話vol.21」(300円)
辻山良雄「しぶとい10人の本屋」(2310円)
辺野古発「うみかじ8号」(フリーペーパー)
夕暮宇宙船「小さき者たちへ」(1100円)
「超個人的時間紀行」(1650円)
柏原萌&村田菜穂「存在している 書肆室編」(1430円)
「フォロンを追いかけてtouching FOLON Book1」(2200円)

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