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だいぶ前にperfect days観た話

 だいぶ前にperfect daysを観たんです。諸事情あって公開した頃は観れなくて、広告だけ眺めていました。それの感想です。なんとなく、生きてるので、なんとなく、書いていきます。つらつら。

 平山の世界を映画という存在を通して追体験をしている気がしました。高速から眺めた街、朝の、忙しなさを予兆させる静けさ、通学通勤で駅に向かって歩く人々、公園で遊ぶ子供たち、音楽と共に彩られた平山の世界。
どのカットも、平山は見えないところで呼吸しながら、自分の世界を大切にしていて、その世界を愛している、それを感じさせるものでした。一風変わったトイレも、平山の世界を大切に彩るもので、どれも欠けてはならない。

 今、世界では物が溢れていて、作られて捨てられて、作られて捨てられて。資本主義であるし、消費が経済を回すための手段ではあるのかもしれないけれど、平山はそういう世界とはまるで正反対のところで生きているように見えて。羨ましくもあるし、あり得ないとも思う。それこそが、平山の強さなんだと観ていて思いました。
持論ですが、自分の目に見える範囲にあるものを意識しながら生活して、それを大切にできる人は、すごい強い人なんじゃないかなと思っています。自分を壊したりしないじゃないですか。自分を消費するために生きたりしないじゃないですか。自分を決して商品なんかにしないじゃないですか。なれるかなあ、なりたいな。壊さないように、大切に。

 やっぱり、好きな小説が関係してくると、この世界で生きていない平山との距離感が一気に近くなるから、とても嬉しいです。パトリシア・ハイスミスは本屋でなかなか見かけないし、しかも著書はいくつもあるから、その中の『11の物語』で一致することってほぼ奇跡だと思うんです。「すっぽん」を読んだとき、私も「こうなるんじゃないか」と恐怖しました。古書店の店長が言うように、「恐怖」と「不安」は全くの別物であるはずなんです。でも、日常ではその差異を意識したりはしない。改めてハイスミスの偉大さと、それをチョイスするヴィム・ヴェンダース監督のうまさ。

 映画とは全く関係ない話で、ホームレス役の田中泯さんは私の先生の知り合いだとなんとなく思い出して、田中泯さんについて話す先生を懐かしく感じたりもして。もう一回映画、観たいなあ。

 

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