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小さな相棒たちと小さな夢
姪っ子のAちゃんは週に数回、妹のMちゃんと、あるいは、ひとりで僕らの住む平屋の家にくる。大抵の場合は宿題を持ってやってくる。昨年から赤ちゃんの我が子を見たくて遊びに来てくれるようになった。そのAちゃんに初めて本を読み聞かせしてあげようと思い立ったのもその頃だったと思う。
Aちゃんがやってくる前から僕はたまに日本語の本を妻に読んであげることがあった。
カズオイシグロ/クララとおひさま
村上春樹/騎士団長殺し
太宰治/走れメロスなど
分厚い長編を持ち上げながら読むのは結構疲れるときもあるけれど、僕とは全く違う価値観や考え方で感想を逐一教えてくれるのでひとりで読むよりかなり面白い。多分、誰かに読んであげるのが好きなのかもしれない。
それで、最初に読み聞かせたのは「はてしない物語」だった。お姉さんのAちゃんにはなかなか楽しめたみたいだ。しかし、そのとき、Mちゃん(小学低学年)もいたので、Mちゃんはすぐに飽きてハリポタになった。
ハリポタはMちゃんも映画で観たことがあり想像しやすいのか、飽きずにお話会を数ヶ月ほどして一冊みんなで楽しんだ。
Aちゃんは時々、同じクラスのKちゃんを連れてくる。そんな時は慌ててKちゃんのおうちに連絡して、早めに帰らせるのだが、お話会は宿題会になったり、鬼ごっこ会になったり、ポーカー会になったりする。
やがてもうひとりお友達が一緒に来るようになり、3人でくると、妻も疲れてしまうため、僕がいる時でかつ前もっておうちの人に連絡してあるときだけふたり以上OKということにした。
月に2-3回は来てくれるだろうか、毎週のときや毎日ひとりでくることもあった。
娘はそんな大きいお姉さんたちに遊んでもらうのが楽しいのか、ずり這いしながら必死に彼女たちを追いかけていたと思う。たっちまでは体重のせいか(10か月くらいで11kgあった🤣)遅かったが、たっちしてからは歩くまでが異様に早かった。歩いたのは彼女たちを追いかけるためだった。
彼女たちに年齢差がある中で妥協点を見つけて遊んでもらい、かなり助かっている。
さすがに仕事から帰ってきて毎日来られると疲れてしまうので曜日を決め合いっこした。
ある日、約束していない日なのにAちゃんがやってきた。僕は少し疲れていて、「今日〇〇時までね、俺めちゃ疲れとるし」と言うと、Aちゃんは了承し、ブランコに乗りに行こうと提案してくれた。
ブランコのある公園までしばらくふたりで歩くあいだ、いつもと様子が少し違った。
Aちゃんの気質はどことなく父親である僕の兄よりも僕に似ている。お調子者で脳天気な子だ。
けれど、その時はずっと元気がなさそうだった。
「Aちゃん、今日、学校どうやった?」
「うーん、まあまあだったよ」
「何の授業あったん?」
「1時間目国語とー、2時間目…と」
国語は何やったかとか授業で何やったか一通り聞いて、さりげなく休み時間何したか聞いてみた。
「昼休みとか鬼ご(鬼ごっこ)したん?」
「今日もできなかった」
「なんで?」
「なんか最近ずっと鬼ごしよーって誘ってもみんなしてくれないんだー」
「それつまらんよな」
「うん、つまんない!Kちゃんとかもクラス違うから誘えてないんだよね」
「友だちむずかしいよなぁ」
「うん」
話を聞くと学年が上がって、親友のKちゃんとは違うクラスらしい。そしてお調子者のAちゃんにややクラスの子たちがどう対応したら良いのかわからないのかもしれないが、とにかく昼休みや休み時間、ひとりのことが多かったようだ。
公園に着くと子どもらしくAちゃんは目当てのブランコに向かってダッシュし、ブランコに乗る。
でもブランコに立ち乗りするAちゃんの背中はやっぱり元気がどうみてもなかった。
背中を押してあげながら、「俺はAちゃんの友だちやから、ひとりやないからな?」と言うと、「うん、わかった、親友ね」と返してくれた。「相棒な!」
と言うと、Aちゃんは少し元気でたのか、「相棒なのに〇〇からまだ誕生日プレゼントもらってないぞ」とちゃっかり言い返して来た。
「なんか俺たまに、めっちゃしょーもないことで悩むねんなー、家帰ってからトラック降りないでそんで暗い曲ずっと聴いたりとか」
「なんか嫌なことあるの?」
「うーん、まあ仕事のこと」
「Aも学校で嫌なことだらけだけど、明るい曲聴いて踊って、寝る」
「お前俺とそっくりやん笑」
「鬼ごのこと考えたりとか」
「なら鬼ごする?」
めちゃくちゃ疲れている日でほんとはすぐ風呂入って飯食って横になりたい日だった。
でも、そんなのはどうってことない疲れで、Aちゃんとなぜか絶対鬼ごっこしてあげたかった。
しばらく遊んで、兄貴の家まで送ってあげた。
帰り道、学校でうまく行かんくても俺がいるし、と言ってあげたかった。でも学校で、とは言うのはまずいなと思った。
僕がAちゃんだったら、ハブられてなかったとしてもそれに近い状況を近しいひとに知られたくない。
だから、
「うまく行かんくても俺おるからな」
とだけ言った。
先週、地縛少年花子くんを数冊持ってきて、子ども用ニュートンの本と交換で貸し借りした。
またKちゃんたちを来週連れてきてもくれるようだ。
少し前の読み聞かせのとき、相棒1号2号の姉妹が僕にプレゼントをくれた。
去年の誕プレを渡してないから、遅れたけどあげるということらしい。
裏を見るとお手紙が書いてあり、ちょっとうるうるしながらも笑ってしまった。
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ちゃっかりお返し待っているらしいです。
彼らと信頼関係が少しずつ多分出来ていて、なんだか僕も背中を押してもらえている。
何か大きなことをしたりするひとはそれはそれで凄いと思う。
僕は多分哲学書とか読んでいる割に大きい事はできない。
人には人それぞれの与えられたり作り上げた環境があり、その中でできることをコツコツとやるしかない。特に僕は多分子どもと一緒になって遊ぶのが向いているのかもしれない。
家族親戚やその周囲の子どもたちと地味だけど信頼関係作って、ひとりひとりとちゃんと向き合って、何かあってもお互い拠り所みたいな、本を通してそういう居場所になってあげたら、そこが俺の居場所でもあり、大事にしたい場所だろうなぁ、としみじみ思った。
小さな相棒たちのために読書したり宿題したりする場所を
って書いてて思ったけど、学童じゃない?
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