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歌唱による治療が脳の構造を変化させ、失語症患者の言語機能回復をもたらす


私の父親は50代後半から数度"脳梗塞"になり3年間一切喋るコトができませんでした。20代前半の私にとっては、魔の48時間で不眠不休で、未だに倒れてICUに入るまでのコトは記憶しております。これが発端で私の人生設計は全て書き替えられるコトになります。… で、脳神経外科の主治医のF先生とお話させて頂いていた言葉が未だに記憶に残っておりまして、「お父さん、野菜嫌いで食事中も水飲まなかったでしょう???」と尋ねられ、図星であったもので大変驚きました。兎に角食事中は水飲まない。+野菜嫌いで、好みの味は「濃い甘辛」~で「肉」「魚」の脳梗塞前のそれまでの父親でしたもので。で、喋ることが出来なかった父親が7年~10年位で喋るようになったのが、父親のお友達が毎日毎日来る日も来る日も、"歩きもおぼつかない" "しどろもどろ" の父親を「カラオケ」に誘って下さいましてね。グングン良くなって、ついに喋るコトができるようになりました。故に私の実体験として、以下のeNeuro 科学雑誌に掲載された研究論文を元に記事とさせて頂きました。ご覧の皆さんの何かの参考になればと… どうぞ、よろしくお願い致します。

https://www.eneuro.org/content/eneuro/11/5/ENEURO.0408-23.2024.full.pdf

【左前頭葉を中心に構造変化】

慢性失語症患者28名を対象に、集団での歌唱トレーニングと標準治療をそれぞれ受けた群の脳の構造変化をMRIで比較しました。その結果、歌唱群では対照群に比べて、言語関連の灰白質と白質に顕著な構造変化が生じていることがわかりました。

灰白質では、言語産生の中心的役割を担う左ブローカ野(運動前野野ブロードマン野44領域)と左運動前野の体積増加が確認されました。

一方、白質においては、言語経路である下記の神経線維束で構造的な連結性の亢進が両側で認められました。

  • 弓状束:ブローカ野と頭頂葉をつなぐ

  • 前頭斜束:ブローカ野と運動野をつなぐ新しい経路

  • 上縦束:前頭葉と頭頂側頭葉をつなぐ

  • 皮質線条体路:運動制御に関与

  • 体部脳梁:両半球をつなぐ

【言語機能改善と相関】

これらの構造変化、特に前頭葉における変化は、治療後の物品naming(呼称)能力の改善度と正の相関を示しました。つまり、歌唱リハビリによって損傷した言語ネットワークが再編され、その結果として失語症状が改善したことが示唆されます。

【リハビリとしての歌唱の利点】

歌唱は言語と音楽の両方の脳資源を活用できるだけでなく、発声によるリズム性や運動性の向上、歌詞による言語情報の連結性向上、社会的相互作用とモチベーション向上など、さまざまな利点があります。これらが総合的に作用して言語関連領域に強い神経活性を引き起こし、回路網を再構築する契機となったと考えられます。

【まとめ】

本研究では、集団での歌唱リハビリが慢性失語症患者の言語機能改善をもたらし、その神経基盤として前頭葉を中心とした構造的可塑性変化が関与していることが初めて実証されました。歌唱は言語ネットワークの再編成を促進する有効な治療ツールであり、リソースが限られた中で有用な集団アプローチと示唆されました。

https://booksch.com/go/me

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