見方によっては現代向き

#全力で推したいゲーム

水滸伝・天命の誓い

皆さんがこれまでの人生で最も多い回数プレイしているゲームは何ですか？　私は光栄の歴史シミュレーションゲーム「水滸伝・天命の誓い」です。FM77AV版、セガサターン版、あとPS版のコーエー定番シリーズをプレイしました。全シナリオの全キャラクターでクリアしましたし、PS版はいまも現役です。なぜかファミコン版の攻略本も家にあります（少し前からどこかに埋もれて行方不明ですが）。グラフィックやBGMのアレンジなど細かい点に違いはありますが、内容はどれも概ね同じです。特にサターン版とPS版は完全に一緒だと記憶しています（違っていたらスイマセン）。ウィキペディアによると、MSX2版はシナリオの数と選択できる好漢が異なるみたいですね。

このゲームのゴールは「信長の野望」や「三国志」みたいな全国統一ではなく、悪臣・高俅（こうきゅう）を戦で倒して捕らえることにあります。そのためには人気を250まで上げて皇帝から高俅打倒の勅令を得なければいけません。人気を上げる方法は領土を得てそこの共鳴度を上げるか、季節の変わり目に時折出現する猛獣を倒す。領土を増やす方法は空白地を自分か配下が統治する、あるいは他の好漢や高俅配下の官軍が統治する領土を戦で奪う。高俅を逃がさないためには23国を取り囲む必要があるので戦は欠かせません。

選べるシナリオは4つあります。どれも違った面白さがあるのですが、今作の特性はシナリオ1に凝縮されています。選べる好漢5人が開始時点で全員逃亡中。配下も領土もお金も兵士も何もないのです。文字通りゼロからのスタート。まずはねぐらを構え、狩りをして兵糧及び売り物となる毛皮を得る。次に民に兵糧を施したり開墾や町開発などの奉仕活動をしたりして共鳴度を上げる。共鳴度が40を超えると人気が上がるので、そうしたら町に行って毛皮を売って活動資金を作り、繁華街にいる人物を誘って仲間にする。仲間にはお金をあげて（契約金みたいなイメージ）忠誠度を上げ、共に奉仕活動をして収穫＆徴収増に結び付ける。お金と兵糧に余裕ができたら兵を雇い、訓練度を上げる。

人気が低い間は優秀な人物は仲間になってくれませんが、稀に例外もあるのでその辺の見極めが大切です。そこでポイントになるのが各キャラクターに備わっている「勇気・忠義・仁愛」という性格上のパラメータ。たとえば勇気型の史進や武松でプレイを始めると、忠義や仁愛の高い人物はすぐには仲間になりませんし、なっても忠誠度がなかなか上がりません。毎年1月に義兄弟以外の配下の忠誠度が必ず下がるのですが、ひどい時は高俅側に寝返ってしまうので注意が必要です。

この「義兄弟」というシステムも面白いです。忠誠度が95以上になった部下を義兄弟にし、好漢のいない領土に送り込むと直接統治することができます（好漢も義兄弟もいない領土の経営はコンピュータに委任されます。実はこの方が効率が良かったりして）。ここで自分と異なる性格の義兄弟を作っておくと（最初のうちは断わられることもありますが）、後々の人集めが有利になります。自分が誘っても仲間にならないのに義兄弟が誘うと成功みたいなケースがあるからです。シナリオ3の李逵（りき）は特にそう。彼は勇気こそ100ですが仁愛が最低レベルなので、たとえば同じ勇気型で仁愛もそこまでは低くない史進などを義兄弟にできたら、仁愛系の人物を誘うのは史進にやらせた方が効率がいいわけです。

裸一貫の拠点探しからスタートして性格や能力の異なる部下を集めてマネジメントし、資金と食料を増やし、兵を雇い、まとまった戦力ができたら空いている土地へ移動するか敵に勝って領土を増やす。その繰り返しで徐々に人気を高めていき、最終的には世直し。ちょっとした起業体験ゲームみたいじゃありませんか？　実際、路銀などを払うことで他の好漢を配下ごとまるまる仲間に迎える方法もあります。まさに企業買収ですね。この交渉で大事なのは交渉者の知力（高いほどかかるお金を低く抑えられる）及び相手との相性。これも誰に任せるかで結果が変わります。

あと忘れてはいけないのがタイムリミット。各キャラクターに寿命はありませんが、1126年12月までにクリアしないと金国が攻め込んできてゲームオーバーになります。「水滸伝」は宋時代の中国を舞台にしたフィクションですが、1127年に金が宋を滅ぼす点は史実通りなのです。このゲームオーバーの瞬間も圧巻なので、ぜひ一度は見てほしい（笑）　

最初に発売されたのが1989年だから古い作品です。でも上記のような「ゼロからの起業体験ゲーム」的な解釈ができる点を踏まえると、案外現代向きかなという気がします。吉川英治や北方謙三の小説版もオススメです。特に後者は全十九巻ですがあっという間に読めます。心の底から熱くなれます。ぜひぜひ！！！