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薔薇の名前

ジャン・ジャック・アノー監督、同名のウンベルト・エーコの小説の『薔薇の名前』の映画化作品。
1327年、北イタリアのベネディクト修道院にフランチェスコ派の修道士、バスカビルのウィリアム(ショーン・コネリー)とその弟子メルクのアドソ(クリスチャン・スレーター)が、フリードリヒ美王の特使としてフランチェスコ会とアヴィニオン教皇庁との清貧論争を調停するためにやってきます。しかしそれぞれの代表が到着する前に不可解な修道僧の死が相次ぎ、ウィリアムは究明に乗り出すことになるのですが…。
原作は学生の頃に読んだんですが、何度も挫折しましたねぇ。一応それ系の学科にいたにも関わらずほんとに難解で理解できず…。ちゃんと最後まで読んだのは3回生の時です。
が、ちゃんとは理解できてないなぁ…多分。
ミステリーの部分はとてもエンターテイメント性に溢れているんですが、ちりばめられた喜劇論、異端論議、普遍論争などなど、この辺が難しいんですよねぇ。
映画版の方はこの辺を思い切って簡略化して(そうしないと物凄い長編になっちゃいますよねw)ミステリーの部分に焦点を合わせて描いたものです。
でも暗黒の中世の雰囲気を物凄く良く出していてとってもいい映画になっています。監督が細部までこだわって作ったセットと小道具は見応えたっぷりです。ショーン・コネリーの重みと迫力のある切れ者の修道僧ぶりもすごくいいし、クリスチャン・スレーターの清潔な少年らしさ、村の娘役のヴァレンティナ・ヴァルガスの存在感も素晴らしくて、とてもよくできた映画です。ミステリーとして優れているし、何よりその壮大さを原作では実感し辛かった迷宮図書館が映像で見事に再現されていることに感動です。
キリスト教世界最大の図書館、知の宝庫を前にウィリアムが子供のようにはしゃいだ声を上げるシーンは印象的です。ラストでこの知の財産が失われる様を呆然と見つめうろたえる姿がなんだかとてもかわいらしいです。
ただ字幕はなんかビデオ版より不親切になってるような…。けっこう重要な台詞である「ペニテンツィアージテ!(悔い改めよ!)」がラテン語のまんまで訳が付いてないんですよね。
あとビデオ版ではラストに「薔薇は神の付けたる名にして、我らが薔薇は、名も無き薔薇なり」というタイトルの元になった詩の一部が入るんですが、DVD版ではカットされてるのがものすご~く残念です。これがないとラストのアドソの独白がちょっと軽くなっちゃうし、この作品の意味合いも貧弱になっちゃう気がします。
それでも映画としては一級品です。でもやっぱりキリスト教史の大体の知識が無いと犯人の動機が腑に落ちないかもしれないですが…。
知は罪なのか。笑いとは、堕落とは。
原作よりはしょられてるから解り辛いけど、原作は知識が膨大に詰め込まれているのでそれに翻弄されてぐるぐるになっちゃうんですよねぇ…。
映画を見てから読むというのも手かもしれないですね。


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