いちは(精神科医)
カウンセラーというものは
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カウンセラーというものは

いちは(精神科医)

カウンセリングをやっておりますと、「こうなった原因は何ですか?」ということをよく聞かれます。ここでみなさんに少し想像してほしいんですけど、たとえば赤信号で突っ込んだ車が事故したとします。一命をとりとめた運転手は酒気帯びだった。どうやらこれが原因らしいぞと思いますね。

ところが、よくよく調べてみますと、交差点に進入するまえに、運転手は意識を失っていて、脳卒中を起こしていたらしい。そうなると、原因は脳卒中ということになりそうです。回復した運転手に話を聞いてみると、職場の健診で高血圧とかコレステロールとか、そういうものをさんざん指摘されてたけど、仕事があまりに忙しくて病院に行けなかった。接待の飲み会も続いていた。事故は接待の翌日だった。

原因の大元は職場にありそうだぞ、と考えていたところ、どうしてそこまで多忙だったかというと、奥さんが浪費家でそのぶん稼がないといけなかったと。なんだ、それじゃ奥さんが原因なのかというと、どうも奥さんの実家は資産家で、倹約とか節約とか、そういうことを教わらずに育ってしまったと。

よし、とうとう事故の原因を突き止めた、奥さんの両親の教育がまずかったんだと(笑) しかし、この両親、奥さんが生まれる前に2人流産されていて、次に生まれた子は3人分可愛がって、3人分ぜいたくさせようと思って育ててらした。そうなると、流産がそもそもの発端なのかと。

みなさん、どこかでなにか変だなと感じられたと思いますが、原因探しをつきつめますと、こういうようなところに迷い込んでしまうわけです。それじゃだめだということで、どこかの時点で、たとえば「今後事故を起こさんために、奥さんの浪費癖をなおしなさい」といったって、問題が解決しますかね。私はそうは思わないわけです。

でも、根掘り葉掘り聞いていくと、本人が考えますね。なんで俺はこんな事故を起こしたんやろ。考えていくうちに、仕事をセーブせないかん、そのためにはお金を節約させないかん、まずは妻と話し合わないかんか、と本人なりに解決策を深めていくわけです。そのなかで、たとえば妻の浪費は止まらんけど、仕事はセーブして、うちは貧乏暮らしでもいいんやと開き直れるかもしらんし、もしかしたら貧乏暮らしを見かねて奥さんの実家が援助してくれるかもわからん(笑)

どういうことになるか予想もつかんわけですが、こうしたことをそばでずっと聞いている、というのが我々カウンセラーの役目なのかもしれません。

以上、故・河合隼雄先生の講演を書き起こした、ように見せかけた作文。

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いちは(精神科医)
3人娘(小5、小2、5歳)と男児(0歳)の親。精神科での学びを育児に、育児での着想を臨床に。本の紹介→https://note.com/booooooks Twitter→https://twitter.com/BookloverMD