【本を出したい人に向けて】タイトルはなぜ重要か? 第1回
はじめまして。2024年5月よりブックダムの編集長を拝命しました
三田と申します。今回は第一回目の記事になります。
これからどうぞ末永く、何卒宜しくお願い致します。
私の自己紹介に関しては、前回弊社広報部の理恵さんが記事にまとめてくださっているので、こちらをご覧ください。
https://note.com/bookdam/n/n9271ad374132
さて、いきなりですが、やはり出版したい方からよく聞かれるのが
「本のタイトルって重要ですか」ということ。
それは多くの場合、「売れるために」という意味が込められています。
私の答えは「超重要です」の一択。
ただし、売れるためというよりは広げるため。
商業出版という言葉を聞いたり読んだりすると「商」という字がはいっているからか、多くの場合、「売れる」というこにフォーカスされがちです。確かにその一面もふくまれています。
ただ、読者は「ただ買うため」「売りつけられるため」に存在しているのでは断じてなく、本、とくに私でいえばビジネス書ですが、そこから得られるメリット(ノウハウが身につく、新たな考え方を知る、成長するなど)がないと当然本を買おうとは思いません。
そして読者はなぜそのメリットを得られるかと言えば、先を生きている著者の苦労した経験、それを乗り越えた考え、手法、そしてそれらが多くの人に共有されることで訪れるであろう社会の予感を1冊の本を通して得られるからにほかなりません。
こう書いていくとわかるのですが、ということは読者に「売る」ためにタイトルをつけるのではなく、「届ける」という方向でタイトルをつけていくとより、自分の本から広がる世界に胸が躍るのではないでしょうか?
つまり良いタイトルをつけるということは、広く世に自分の考えを届けるために必要なことなのです。
広く本を世に届けるために必要なことは、今後書いていくとして、
今日はタイトルにまつわることで重要なことを4個書きたいと思います。
1個目。書店員さんに「読者に刺さりそう」とおもっていただくことが超重要。
本を注文して並べてくれるのは書店員さんです。
毎日多くのタイトルが書店に届くわけですが、それらを見ている書店員さんだからこそわかる「読者にささる」という感覚。
それにこたえられるタイトルでなければなりません。
そして、書店さんにおいていただかなければ、
読者の目に触れる機会も得られません。
やり手の編集者であればあるほど書店さんとのパイプをつくって
くれる営業マン(書店営業の方々は直接書店員さんからタイトルのアドバイスなども頂戴するため)からの意見は最重要事項と位置づけ、耳を傾け、
必要があれば決まっていたタイトルを著者と調整し、再度タイトル設定をおこなうことも珍しくありません。
もし企画が通って、執筆も完了し、編集者とタイトルをつくって、自分のタイトルが没にされた場合は真摯になぜ没になったのか? 耳を傾けてください。理由を聞くことで、納得できることがあるかもしれませんし、特にそれが書店現場から着ている場合は、要チェックです。
2個目。読者が思わず手に取りたくなるかどうかはタイトル次第。
私がタイトル力で思わず買ってしまったのが、『トヨタの会議は30分』。
当時私が勤めていた会社の会議が2時間、週3回くらいあったので、
「会議が30分だったら、あれもできる、これもできる」などと
妄想を膨らませ購入したのです!
個人的な経験をかきました。
もう少し広く見ると、本書が出たのは2021年。
コロナが社会を覆い、ビジネスにも生産性やファシリテーション力が求められていた時代です。
そんな折、「会議」「トヨタ」そして「30分」というキラーフレーズをちりばめてきた編集者のワードチョイスにしびれました。
このタイトルがもし『トヨタの会議は1カ月』
だったら私はこの本を手に取ったか? そして、売れたのか?
このタイトルがもし『トヨタの会議は最強だ』
だったら私はこの本を手に取ったか? そして、売れたのか?
今もよく考えさせられます。
(内容はとても素晴らしい本ですので、気になる方は
Amazonで検索してみてください)
トヨタという最高のアイコンはもちろんのこと、
30分というキラーワードも含まれている
タイトルだからこそ、私は手に取りました。
本書の担当編集者に話をお聞きしたところ、
ベストセラーになっていたようで、改めてタイトルの強さを実感しました。
3個目。本のタイトルがなかったら…
急ですが、本のカバーにタイトルがふされずに書店で陳列されていたらどうでしょうか?
「自分の悩みを解決したいがためにビジネス書コーナーにきたのに…」
とか
「自分の今読みたくなる本を探しに来たのに」
などと残念な気持ちになる方がたくさん現れるであろうことは
想像に難くないはずです。
本はおよそビジネス書1冊であれば、250ページ前後で6万字ほどあります。
そんな重厚なコンテンツなのに、めくってもどこにどんな重要な要素が
かいてあるか、判別しにくい本において
ぱっと見で何が書いてあるか表現しているのが、タイトルです。
書店の健康書コーナーをのぞけば、『100年ひざ』『糖質疲労』など
のタイトルがランキングインしていますが、このタイトルを読むだけで、
中に何が書いてあるかイメージでき、「買いたい!」となります。
最近は要約サイトや要約のYouTubeチャンネルがはやっておりますが、最強の要約はタイトルです。
多くて10文字程度。すくなければ漢字4文字程。
この文字が数万字のコンテンツをあらわしていることを考えると
タイトル付という仕事は、編集者、営業部、広報部、社長、著者が一丸となって(ブックダムの場合)決めるべきものという実感がわいてきます。
4個目。企画が一変…
じつはこれあまり知られていないのですが、ニッチで通りそうにない企画もタイトルを変えると、すさまじいオーラを放ちます。
今でこそ盛り上がっているシニア市場。「老後」、「定年後」のついた
タイトルは書店で多く見かけるようになりましたが、5年前、私のもとに
「定年後は起業して楽しく暮らす(仮)」という企画がありました。
その時は老後2000万円問題がクローズアップされて2~3年たっていた頃でした。
年金や資産運用の需要はたかかったものの、シニア世代の働き方とくに起業にかんしてはそこまで盛り上がっておらず、当初企画にたいして社内では厳しい意見も多くありました(当然です)。
そこで、タイトルを2段階にわけてすすめ、まずテーマをわかりやすくということで、「定年起業をはじめるならこの1冊」とし、企画がそもそも何のテーマなのかかわかりやすくしました。
しかし、それだけでは決定打にかけるの(パンチがないし、どこにでもありそうなタイトル)で、メインタイトルを「定年ひとり起業」にしました。
こうすることで、インパクトを出し、覚えてもらいやすいタイトルになりました。
そして、新聞広告を打つことでシニア層にリーチしそうなイメージもつかめてきました。ただ反面、新しい概念故、理解されない可能性を考え、リードに「定年起業をはじめるならこの1冊」を追加しました。
正式タイトルは『定年起業をはじめるならこの1冊! 定年ひとり起業』となりました。
ただ、もちろんこれだけで企画が通ったわけではありません。
どういったマーケティングが可能か? どういう目次構成がベストか?
などそういった細部まで決定して企画はとおります。
しかし、おそらくタイトルがもとのままだったなら、
企画通過は難しかったでしょう。
タイトルワークで「可能性あり」と認識してもらい、企画決済していただいたのち、この本は合計1万部をこえました。
まだまだ新米編集者である私なのですが、こういった観点からタイトル付には慎重に慎重をきしております。
未だにいいノウハウがあったら取り込んだりもしています。
メンバーの意見をとにかく盛り込みたいので、聴きまくります。
この間も、「マーケティング会議をリアルで開催してください」と社長にお願いし、快諾いただいたのですが、みんなでひとところにあつまって議論したいのはこういったことがおこるからなのです。
次回以降あかせる範囲でタイトル付のノウハウなど公開していきますが、
一点ここで注意が必要です。
タイトルの力は本当につよいものがあります。
たとえば、『○○が9割!』というタイトルがいっときはやりました。
売れるタイトルをまねするのは個人的には賛成派なので、類似タイトルの本が多数出てくることはまったく否定しませんが、大事なのは、「本当に○○が9割なのか、根拠がないといけない」ということです。
「はやっているからこのタイトルにしました」
「アテンションをあつめたくて、このタイトルにしました」
結構巷ではききますが、9割というタイトルがパンチがある以上、
読者はシビアにみているし、根拠が薄弱だとレビューサイトで厳しい評価が来る時代です。
レビューサイトに掲載してくれたらいいほうで、
もしかしたら「本ってこんなものか」とあきらめて本自体を購入することを
敬遠してしまうかもしれません。
「本のコンテンツとタイトルがしっかりリンクしている」
だからタイトル力が活かされる、ということは大前提認識しておく必要が
あります。