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【本073】『読み終わらない本』

著者:若松英輔 出版社:KADOKAWA

先週、若松さんの本を紹介したので、今週も引き続き紹介しようと思います。

この本は、若松さんが私たちに送る手紙の形で綴られています。若松さんからゆっくりと紡ぎ出される言葉は、私たちの心に深く届いていきます。どれも大切にしたい言葉たちです。

今回は、2つのことだけお話ししようと思います。

1つ目は「愛しい」という言葉。これは、若松さんが折に触れて書かれている言葉です。

「「愛しい」と書いて「かなしい」と読む。それだけでなく「いとしい」あるいは「いとおしい」とも読む」

素敵だと思いませんか。愛おしさと悲しさは別々のものではないと言っています。今まで、負の感情が起きるたびに、その感情から逃げたり、戦ったり、なかったことにしていたけど、そんな必要はなく、ともにいて良いんだとこの言葉に触れるたびに思います。

もう1つが、本との出会いです。

「君にたくさんの本を読んでほしいとは思っていない。でも、簡単に「読み終わらない本」には出会ってほしい。そして、君を変えるだけでなく、変わっていく君と共に「生きて」くれるような本に出会ってほしい。」

本には、その時にしか理解できない行間が潜んでいます。その時にしか届かない言葉もあります。私には繰り返し読み続ける本が何冊かあります。しかも、旧友のように心の中に時折やってくる登場人物もいます。なんだかそのことがとても幸せなことだと思いました。

この本を読んでいたのは、仕事に忙殺されていた時。忙しくなると丁寧に生きることが難しくなります。メールの返信ひとつとっても言葉を見誤ることもあるし、相手に不快な思いをさせてしまうこともあります。そんな時だからこそ、この本の言葉たちが私の心に深く届きました。


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