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ベトナムの時代BLマンガ『月夜の雨』を読んで思ったこと

2022年年末に発表された第16回日本国際漫画賞
入賞作品の中にあったベトナムの時代BLマンガ、Hoàng Tường Vy(ホアン・トゥオン・ヴィ)作の『Bẩm thầy Tường, có thầy Vũ đến tìm!』を読みました!

『Bẩm thầy Tường, có thầy Vũ đến tìm!』はベトナムのComicolaという出版社が運営するCOMIというウェブサイトで公開されています。

めっーちゃ可愛いーーー!主役二人の日常を描いた癒し系BLです!!!!

なんとWebtoonのサイトで英語版も公開されています。
私はベトナム語はちんぷんかんぷんなので英語版を読みました!!!

英語のタイトルは『Rain In A Moon Night』(月夜の雨)
ベトナム語のタイトル『Bẩm thầy Tường, có thầy Vũ đến tìm!』を直訳すると「トゥオン先生に挨拶してください。ヴー先生があなたを探しに来ています」だそうです(By Google翻訳)。
原題と英題とではだいぶ意味が違いますね……果たして英題の「月夜の雨」とは何を意味しているのか……?

いずれにしても「トゥオン先生(thầy Tường)」と「ヴー先生(thầy Vũ)」の二人が主役です。

ベトナム語の「thầy」は、当時の教育を受けた男性によく使われた敬称だそうです。私はベトナム語は明るくないですが、日本語で使う「先生」という理解で合ってますよね!先生ものBLです!

医者をしているトゥオン先生と、子どもたちに儒教を教えているヴー先生。幼馴染の二人のささやかな日常、周りの人々の生活を描いたスライス・オブ・ライフもの!
おおらかで包容力のあるトゥオン先生。ちょっぴり焼きもち焼きなところもあって可愛いヴー先生。二人のほっこり癒されるやり取りはもちろんのこと、当時の子どもたちの遊びやお菓子なども登場してとても興味深いです。

英語版には現代もののサイドストーリーも掲載されていて、本編とは違うトゥオン先生とヴー先生のいちゃラブぶりが垣間見れます…!

単行本(ベトナム語)は2023年1月時点でComicolaから2巻まで出ています。

以下の日本語の記事を読むとどうやら全5巻のようです。
作者のヴィさんのコメントも読むことができます。

この作品を調べていて「ベトナムの時代BLが日本国際漫画賞で入賞」(拙訳)というタイトルの興味深い記事を発見しました。

この記事の中で興味深いのは、ベトナムでは比較的LGBTが受け入れられていて、その状況がこの『Bẩm thầy Tường, có thầy Vũ đến tìm!』の人気に反映されているというもの。

確かにこのページの一番初めにリンクを張ったCOMIのTOPぺージを見てみると本作が「最も読まれたベトナム作品(TRUYỆN VIỆT NAM ĐƯỢC ĐỌC NHIỀU NHẤT)」ランキングの1位になってます!(2023年1月時点)

なんか嬉しいなぁ~!!

世界のマンガ事情を知るにつれ、BL作品を自由に楽しめることの素晴らしさを噛みしめる毎日…。

このときにふと思い出したのがベトナム系アメリカ人のTrung Le Nguyen(トラン・リ・グウェン)さんのThe Magic Fish
(「ベトナム系」というところしか繋がりはありませんが…汗)

このグラフィック・ノベルもホントにホントに素晴らしいマンガなのです!

ベトナム系アメリカ人の少年ティエンは英語が話せない母親の練習のためにおとぎ話を話し聞かせる。現実の世界とおとぎ話の世界、そして過去がリンクしながらも入り混じりつつ物語は紡がれる。

ティエンは自分がゲイであることを母親にカミングアウトしたい。けれど英語ができない母親に、ベトナム語で表現する言葉が見つからず、ティエン少年は思い悩む。
加えて彼が通うカトリック系の学校の教師や神父は、同性愛を快く思っていない。

こうしたハードルを乗り越えてさらに深まるティエンと母親との絆が描かれており、とても心温まる物語です。

『The Magic Fish』はアメリカのマンガ賞、ハーベイ賞2021Best of the YearとBest Children and Young Adult Bookダブル受賞もしました!

受賞もうなずける優れたジュブナイル・コミックですが、その一方、2021年には次のようなニュースも流れてきました。
テキサス州で「生徒に不快感を与える」可能性のある本850冊がリストアップされ、学校の図書館に置かれてないか報告を求めたというものです。そのリストの中に『The Magic Fish』も挙げられたのです。

なおこのリストにはティリー・ウォルデン『スピンや、マリコ・タマキ&ジリアン・タマキ『THIS ONE SUMMERマーガレット・アトウッド&ルネー・ノールト『侍女の物語 グラフィックノベル版といった日本語にも翻訳されている傑作グラフィック・ノベルも挙げられています。

なんだかなぁ~~~……。
なんとも言えない気持ちになります。

世界のマンガ事情を知るにつれ、BL作品を自由に楽しめることの素晴らしさを噛みしめる毎日…。
(大事なことなので二度言いました!)

そしてもちろん作品だけの話ではなく!!
セクシャルマイノリティへの差別にはNOと言っていきたいと強く思います!


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